アート

自由でユニークな福岡のアートギャラリーが残したもの。

BRUTUSCOPE

No. 938(2021.05.01発行)
HOME SWEET HOME 居住空間学2021
梅佳代(左) 川島小鳥(右) 福岡撮り下ろし作品 2020年秋 ©Kayo Ume ©Kotori Kawashima

『TENJIN MATSURI  梅佳代「天神さま」 川島小鳥「ピンクの光線」』

写真家・梅佳代と川島小鳥が同じ写真という表現で、同じ福岡という場所を撮り下ろした。「作家それぞれの魅力が際立ち、2つの個展を1つの会場で楽しめるように」と安田さん。アートディレクターには祖父江慎。

http://artium.jp/exhibition/2021/21-01-ume-kawashima/

「現代アート」の枠組みを越えて。

 福岡・天神にあるアートギャラリー〈三菱地所アルティアム〉。当時30代だった奈良美智や会田誠など、その後目覚ましい活躍を見せる作家にいち早く光を当て、地方のアートシーンを盛り上げてきた。しかし、再開発により今夏閉館することに。クロージングを目前に控える現在は、写真家の梅佳代と川島小鳥が福岡の街を撮り下ろした写真展が開催されている。ディレクター安田由佳子さんに話を伺った。

「街の姿が日々更新される中で、32年間一緒に歩んできた福岡の街や人の今の表情を題材にしたいと考え、オファーしました。ポートレートを得意とする2人が、見慣れた街の表情をどう切り取るのかに注目しました」

 ジャンルに縛られないユニークな人選や作家の個性が際立つ企画。これまでの”アルティアムらしさ”はどのように作られてきたのだろうか。

「ジャンルごとに歴代のディレクターが作家をピックアップしてきました。初個展の方が多いのは、公立の美術館に比べて小規模ゆえに挑戦しやすい場所だから。漫画『A子さんの恋人』で知られる近藤聡乃さんや現代芸術活動チーム〈目〉、沖縄出身の写真家・石川竜一さんなどを取り上げてきました。またコアな展示も実施しており、都築響一さんが九州のアンダーグラウンドな側面を深掘りする企画展『僕的九州遺産』は象徴的でした」

 さらに地元との連携も密に行ってきた。福岡を拠点にするアーティスト、鹿児島睦の展示を太宰府天満宮宝物殿と同時開催で行ったほか、地元のヴィンテージショップの作家性に着目し、家具と幻想的な動物の彫刻作品を組み合わせて展示したことも。

「地元にとって”新しい発見や関係性が生まれる場所”でありたい。そんな願いを根底に持って歩んできました」

 次回はファッションブランド〈ANREALAGE〉の展示を企画。閉館前に、ぜひ訪れてほしい。

三菱地所アルティアムって?

1989年開業。現代アートを軸に、デザイン、ファッション、建築、食、文学など取り扱うジャンルは多岐にわたり、年間8〜10本を開催。作家と来場者が、直接交流する機会を積極的に設けているのも魅力。2021年8月31日をもって閉館。

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Yoko Hasada

本記事は雑誌BRUTUS938号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は938号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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