エンターテインメント

Twitter発ヒットマンガの最新事情。

WEBマンガ潮流を探れ!

No. 937(2021.04.15発行)
やっぱりマンガが好きで好きで好きでたまらない

近年、Twitterに投稿されたマンガが注目を集め、ドラマ化、アニメ化などメディアミックスされるケースが増えている。Twitterに漫画を公表することは、すでにデビューしている作者にとっては、描きたいものを好きに描いて発表できる自由度がある。デビューを目指している人にとっては、自分の作品を一人でも多くの人の目に触れさせる大きなチャンスがある。ヒット作はどんな経緯で編集者の目に留まったのか?これからメディア化されそうな作品は?いまのTwitterマンガ事情を探ってみた。

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』
豊田悠/ガンガンコミックスpixiv(スクウェア・エニックス)

©Yuu Toyota/SQUARE ENIX

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』は、『チェリまほ』の略称で親しまれ、ドラマは日本のみならずアジア各国でも人気が出るほど。担当編集者の伊藤輝充さんは、以前から作者・豊田悠さんのTwitterをフォローしており、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』の投稿30分後に見て、編集長に連載の確約を取った上で即オファー。「連載を決めるまで1時間かからなかったので、私の担当作品では過去最速だったと思います(笑)」と伊藤さん。『チェリまほ』は、童貞のまま30歳を迎え、触れた人の心が読める魔法を獲得した安達が主人公。地味な自分とは正反対のイケメンで仕事のできる同期の安達が、実は自分に好意を寄せていることを知り、安達のことを意識しはじめるというラブコメディ。「作品の魅力は、どの登場人物もピュアで応援したくなる、最高に尊い恋愛模様にあると思います。あの魔法に必要性があり、Twitterで投稿されていた4ページのストーリーがテンポよく、笑えるオチまでついていて読みやすいところもいい。豊田先生の優しいお人柄も登場人物たちに投影されています」(伊藤さん)。

『先輩がうざい後輩の話』
しろまんた/一迅社

©しろまんた/一迅社

今年、アニメ化が予定されている『先輩がうざい後輩の話』もTwitter発。担当編集者の鈴木海斗さんが夜中にTwitterを眺めていたら、作者のしろまんたさんの投稿が流れてきた。キャラの表情が魅力的で、作者の描きたいものがしっかりと込められていると感じた鈴木さんは書籍化をオファー。「投稿から6時間後くらいにお声がけをしたので、一番乗りかと思ったら2番目でびっくりしました。最終的に30人くらいからオファーがあったそうなので、ご縁があってよかったです」と振り返る。『先輩がうざい後輩の話』は、商社に入社2年目で早く一人前になりたい五十嵐双葉が、ちょっとガサツだけど面倒見のいい先輩・武田晴海のことをうざいと思いつつも、まんざらでもない様子を描いたラブコメディ。「短いページ数の中にたくさんのときめきを詰め込んでくれ、確実にキュンとできます。タイムリーな気持ちをしっかりとエンタメに落とし込んでいて、しろまんた先生の反射神経が光っています」(鈴木さん)

『幸せカナコの殺し屋生活』
若林稔弥/星海社COMICS(星海社)

©若林稔弥/星海社

今後、映像化を含めたメディアミックスが期待される作品のひとつに、『幸せカナコの殺し屋生活』がある。就職した会社がブラックすぎて退社したカナコ。インターネットで求人情報を見つけて面接を受けた会社が、実は殺し屋。給料の良さと福利厚生の充実ぶりに惹かれて殺し屋に転職してみたところ、意外にも天職だった――、というストーリー。担当編集の太田克史さんは、作者の若林稔弥さんとは以前に仕事をしたことがあり、「ストレートな社会人ラブコメを描いてほしい」とオファーしていたものの、若林さんに難色を示されていた。そんな時、Twitterに『幸せカナコの殺し屋生活』が投稿されていたという。「めちゃくちゃ面白いのですが、売り方が難しそうというのが正直な感想でした。ただ、先生の投稿がどんどんリツイートされ、『大きな魚を逃したかも……』と思っていたら、若林先生のほうから、『このマンガは売り方が難しいので太田さんに担当してほしい』とご連絡があり、これはもうやるしかない! と思いました」と太田さん。殺し屋未経験のカナコが、実は殺し屋のセンスが優れていて、次々と依頼のあった悪人を殺していく。そのカジュアルでポップな殺しと、カナコがどんどん元気で前向きになっていく様子がユニークに描かれていて読み手を引き込んでいく。「カナコは殺し屋ですが、読むと元気になれるのが一番の魅力。カナコと同じように社会人として働いている人にも『頑張って仕事をしよう!』と思ってもらえるような、爽やかな殺し屋ドラマになっています」(太田さん)


3作品を担当する編集者たちも、Twitter発のマンガが確実に増えていることを実感している。スクウェア・エニックスの伊藤さんも、「今はTwitterなどのWEBで発信することで多くの人の目に留まり、デビューへの道が広がっています。昔なら出会えなかったかもしれない才能に、今はTwitterなどで出会えることは編集者にとっても幸せなこと」と語る。星海社は、WEBとTwitterで毎日連載を行う「ツイ4」という媒体を立ち上げ、新しい作家や作品の発掘に力を入れている。「Twitterで作品を見つけて、即日で企画が通って連絡することもあり、海外在住の作家さんを知ることができるのもTwitterならでは」と星海社の太田さん。各編集者にいま注目しているTwitter作品を尋ねたところ『いびってこない義母と義姉』(一迅社)、『クールドジ男子』(スクウェア・エニックス)、アニメ化が決定した『見える子ちゃん』(KADOKAWA)が挙がってきた。広大なネットの世界には、まだまだたくさんの人気マンガが潜んでいる。

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text/Akiko Yoshikawa

本記事は雑誌BRUTUS937号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は937号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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やっぱりマンガが好きで好きで好きでたまらない(2021.04.15発行)

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