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【4月30日〜公開】森山大道という伝説が教えてくれるもの。

BRUTUSCOPE

No. 937(2021.04.15発行)
やっぱりマンガが好きで好きで好きでたまらない
©『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい』フィルムパートナーズ

木村和平と石田真澄、若き写真家が目撃したその素顔。

 今春公開の映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』。共に90年代生まれの写真家、木村和平と石田真澄が本作を観た後に刷新された森山像の数々を語る。時空を超えるレジェンドの生きざまは、2人の写真魂にも火をつけるか?

木村和平
一昨年に自分が『灯台』を出したら、色々な場所で森山さんの写真と比較されて驚きました。光栄なことですが、森山さんの写真をほとんど見たことがなかったので。むしろこのまま見ない方がいいのではとも思いつつ、『光と影』を最近買いました。でも今回の映画を観て、ご本人のことが、めちゃくちゃ好きになってしまった……。
石田真澄
いいきっかけになってますね(笑)。私も木村さんと同じ感じで、『光と影』は好きで見ていました。
木村
写真の印象で人間像も勝手にイメージしていたのですが、良い意味で覆されました。撮影する姿も魅力的で、撮った後に絶対に頷くんですよね。ファンの方のiPhoneにサインする時も丁寧に書かれていて。そこに人柄が出ていて、あらゆる仕草が素敵な人でした。
石田
編集者や造本家の方に、復刊する『にっぽん劇場写真帖』の写真について一枚一枚説明している時がすごく楽しそうで、写真を撮り始めた時からずっと変わらずに、写真を撮るのが本当に好きなんだなと伝わってきました。
木村
自分の写真を見てずっとニヤニヤしているんですよね。森山さんは生活に常にカメラがあって、移動中にもずっと撮っているタイプだけど、僕は撮らない日の方が多いかもしれない。そこは自分との違いも感じました。
石田
中平卓馬さんのことを海で話している時に「日が出てきてよかった」とポロッて言っていたり、街で取材前に「晴れるといいなあ」って言っていたり。思っていたより光への執着があって、自分との共通点を見つけたのは意外でした。でも森山さんは撮った後にパソコンの前ですぐ写真を選定していましたが、私は時間が経ってから見直すことが好きで、そこは決定的に違うし、森山さんのその姿勢は印象的でした。
木村
本当にこの人フィルムで撮ってきたんだよね? ってね(笑)。
石田
今その判断ができるのは、昔からそういう気持ちだったんでしょうね。
木村
一枚には執着しない。デジタルに完全移行したことでその姿勢がさらに明確になって潔い。あと映画に出てくる全員、本当に写真が好きなんだなって。僕は写真がそんなに好きじゃないのかなと思うくらいに(笑)。
石田
熱量がすごかった。事務所に完成した写真集が届いた時、造本家の町口(覚)さんが開かずにずっと側面を見ていたことが印象的でした。
木村
匂いを嗅いでいましたよね。
石田
インクや紙の匂いっていいです。
木村
写真集作りに本人以外の人たちがあんなに熱量を持って取り組んでいるのが素晴らしい。自分も『あたらしい窓』を作った時に、自分より周りの人たちが本気になってくれて泣きそうになったのですが、それがこの映画でも映っていました。みんな本を作るために命を懸けている。終盤が特に観ていて面白かったですし、自分も写真集を作り続けようと励まされました。
石田
私も同じで、まず写真集を作り続けたいし、また誰かと一緒に作りたくなりました。制作の現場が丁寧に描かれていたのもよかったですよね。
木村
この映画は構成も素晴らしいし記録としても重要だと思います。自分はまだ写真を始めて10年くらいだけど、まだ生まれていない人たちが、何十年後に自分の写真と出会った時にどう思うんだろうって。この映画を観てそういう期待を持ちました。

『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』

森山大道の現在に密着しながら、1968年刊行のデビュー作『にっぽん劇場写真帖』の復刊プロジェクトなど、複数の物語が交差するドキュメンタリー。森山の原点、過去、現在を通して、知られざるその人間像が浮き彫りになる。4月30日、新宿武蔵野館ほかで全国公開。

https://daido-documentary2020.com/

森山大道と2人の作品、共通点と相違点。

木村和平『灯台』 2019年

森山の代名詞となるモノクロから選んだ一枚。「僕は『灯台』で初めてモノクロを撮ったので、その象徴的な一枚を選びました。森山さんの作品を見ていない認識でも、絶対どこかで影響を受けているんですよね」

石田真澄『light years-光年-』 2018年

撮影時の共通項から選ばれた一枚。「森山さんの撮影の様子を見て、とっさに光にカメラを向けたり、角度や姿勢を変えながら撮っているのは一緒だと感じました。私が選んだのも、体を曲げながら影を撮っている自分が写り込んでいる一枚です」

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木村和平
きむら・かずへい/1993年福島県生まれ。東京都在住。第19回写真1_WALL審査員奨励賞受賞(姫野希美選)。主な写真集に『袖幕』『灯台』などが。新刊に『あたらしい窓』(赤々舎)。

石田真澄
いしだ・ますみ/1998年埼玉県生まれ。2017年、初個展『GINGER ALE』を開催、翌年『light years -光年-』TISSUE PAPERS刊行。19年に『everything will flow』を同社から刊行。

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Nao Amino

本記事は雑誌BRUTUS937号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は937号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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