ライフスタイル

「砂が崩れて、犬がなく」

戌井昭人『沓が行く。』

No. 937(2021.04.15発行)
やっぱりマンガが好きで好きで好きでたまらない

 草木も生えていない荒れた地に出た。曇天天国、あたりを見わたせば、死んだ後の世界のようだ。崖の穴ぼこからピーピー、薬缶みたいな音を立てながら風が吹き出している。驚いた犬が走り出し、後脚から砂が舞う、吹き出した風に乗り、ぐるぐるまわって、犬の口の中に入った。よだれを垂らした犬は奥歯を噛む、ジャリっと音がして砂を吐き出す。犬は腹が減った。砂はよだれにまみれて空をあおいだ。太陽はたぶん死んでいた。

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いぬい・あきと

〈鉄割アルバトロスケット〉主宰。近著に『さのよいよい』(新潮社)など。著書多数。

編集/
村岡俊也

本記事は雑誌BRUTUS937号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は937号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.937
やっぱりマンガが好きで好きで好きでたまらない(2021.04.15発行)

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