エンターテインメント

ヴェイパーウェーブの先を行く、女性音楽家たちの新作。

BRUTUSCOPE

No. 936(2021.04.01発行)
猫になりたい

世界から注目を浴びる、日本の新しい才能。

 廃車に見立てたセットに立つビリー・アイリッシュや、布面積の極めて小さい衣装でダンスをキメまくったメーガン・ザ・スタリオン&カーディ・Bなど。第63回グラミー賞では、女性音楽家のステージが強烈すぎた。

 日本でも春に入り、次々と女性ミュージシャンたちが新作を発表。まず、蓮沼執太フィルなどへ、スティールパン奏者として参加するUtena Kobayashi。SFストーリーを伴った3作のコンセプトシリーズを、今年3月の4枚目となるEPで着地させ、その世界観を受け継いだアルバム『6 roads』を完成させた。冒頭の「GONIA SE IIMIIX」は、生温かいシンセサイザーの旋律とクラシカルな声楽で幕を開け、ダブステップやEDMを通過したディープなビートが加速。MVではヌルッと誕生する生命体やドラゴンなどをCGアニメで映像化。まるでゲーム音楽のようだ。

 七尾旅人やtofubeatsらが参加したデビューアルバム『In Any Way』がロングセラー中の大比良瑞希は、SIRUPらが所属する音楽集団・Soulflexと共演したシングルを発表。国産の清々しいまでのファンキーなディスコビートは今時珍しいくらい。しかしシティポップブーム後、若年層がジャミロクワイなど、アシッドジャズ〜ファンクを再評価していることを踏まえれば、“今の音”なのかも。

 そして、坂本龍一と後藤正文が3月に主催した配信イベント『Decade 現在から何が見えるか』に出演し、漆黒かつノイジーな楽曲と、微動だにしないパフォーマンスが見事にバズったMs.Machine。早くも欧米のダークウェーブや80年代のNYアンダーグラウンドが引き合いに出され、評価が急上昇中している。

 現在は高田みどりやカラード・ミュージックなどの作品が、欧米からアナログ発売されるや、完売になっている。YouTubeやサブスクを掘る海外ディガーにとって、日本の音楽はまだ未開の地らしい。それゆえ、新しい日本の才能が世界中に広がることも十分考えられる。国内の音楽好きは先にチェックしておくことをお勧めする。

アナログ化希望! 強烈な個性を放つ3作。

Utena Kobayashi
うてな・こばやし/ストーリーを伴ったコンセプトEP「Fenghuang」「Darkest Era」「Pylon」、そして「GONIA SE IIMIIX」に続く、集大成的なアルバム『6 roads』。音楽に合わせた物語と絵画による絵本仕様のCDも発売。

大比良瑞希
おおひら・みずき/2015年にソロデビュー。R&Bやレゲエなどさまざまなビートを歌いこなしてきたシンガーソングライター。新曲「ダージリン」はSoulflex所属のZINをコーラス、プロデュースに野村帽子を迎えたディスコサウンド。

Ms.Machine
海外からも注目が集まっている女性3人組によるアルバム『Ms.Machine』。吐き捨てるようなボーカルに、ノイジーなギターとリズムボックス。ノイズに包まれ一瞬暖かくなる「Nordlig Ängel」など最高。CDは公式HPで販売中。

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Katsumi Watanabe

本記事は雑誌BRUTUS936号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は936号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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猫になりたい(2021.04.01発行)

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