エンターテインメント

東アジアの最前線ZINE&アートブックの世界。

BRUTUSCOPE

No. 935(2021.03.15発行)
始まりの服。

クィア、LGBTQ+、ジェンダー、多様性を発信する5冊に迫る。

セクシュアリティやジェンダーをテーマにしたアジアの出版物が揃うブックストア&ライブラリー〈loneliness books〉。店主の潟見陽さんは、数年前から韓国や台湾など東アジアの国々から生まれるZINEやアートブックを収集している。

「東アジアでは日本よりもLGBTQ+やフェミニズムへの取り組みが、数歩先に進んでいて、若者たちがそれぞれのジェンダーに対する思いをZINEなどで発信しています。それに、同じアジアなら文化的にも身近だなと」(潟見さん)

 韓国では2014年に保守系キリスト教団体の妨害によりソウル・クィア・パレード(LGBTQ+文化、権利の平等を主張するパレード)が妨害されるなど、性的少数派への抑圧が激しさを増していた。また台湾でも2019年に同性婚が法制化されるまでは、同性婚賛成派と反対派との衝突が続いてきた。そうした社会への反発が、東アジアのZINEの活況の一因となったという。

「生半可な出版物では抑圧に負けてしまう。だからこそクリエイターたちも“社会へのカウンターとして強度のある出版物を作ろう”という意識で、優れたZINEを生み出しているんだと思います。デザインも素晴らしく、写真家やクリエイターのセンスも高い。言葉が理解できなくてもビジュアル表現で問題意識を伝えるものがとても多いです」

 本ページで紹介するのは潟見さんが推薦する5冊。誌面を開き、新しい価値観に触れてみては?

『MISSIONARY』【北京】

北京の出版スタジオが制作したクィア・マガジン。創刊号では中国の男性同性愛者に、第2号では女性、トランスジェンダー、身体障害者にもフォーカスし、社会で見過ごされてきた人々が抱える問題に光を当てている。鮮烈なスナップとコラージュを駆使したデザインによって、現代を生きるセクシュアルマイノリティたちの思想や精神性を表現した一冊。DaddyGreenBASEMENT/3,300円。

『GLASS CLOSET』【ソウル】ヤン・スンウク/著

性の多様性をテーマにしたオランダの写真コンテスト『プライドフォトアワード』でグランプリを獲得した韓国の写真家ヤン・スンウクの作品集。スーパーマンやバービー人形などのフィギュアを用いて、性愛の形を示す。同性愛者の性やセックスがタブー視されてきた社会へのカウンターとして、それらをポップに表現している。2,530円。

『ROOM』【台北】鄭庭維/著

写真家・鄭庭維が、同世代の男性たちと、彼らが暮らす部屋を写し取った写真集。被写体への親密な視線が感じられ、男性たちの外で見せる姿とは違うリラックスした佇まいが映し出されている。日本の写真家・森栄喜からの影響も色濃く、台湾で出版された写真集『tokyo boy alone』へのオマージュも感じる装丁になっている。3,520円。

『Bisexual Icons』【香港】

文章とイラストを手がけたのは、香港でクィアに関する本を集めた移動図書館を展開する〈Queer Reads Library〉のメンバー、チェン・ケイトリン。彼女が自身のアイデンティティを探していたときに背中を押してくれたという映画監督のデジレー・アクヴァンなど8人のクィアなアイコンたちをイラストとともに紹介している。リソグラフで印刷された青とオレンジの蛍光色も美しい。現在品切れ。

『女の子だから、男の子だからをなくす絵本』【ソウル】ユン・ウンジュ/著 イ・ヘジョン/絵

「女の子だから/男の子だから」という既存のジェンダー規範をアップデートする絵本。韓国国内の小学校でクィア・パレードを紹介した教師がバッシングされたことを受け、「小学生のうちからしっかりとジェンダーを学ぶべき」というメッセージを込めて制作された。3月下旬、日本語版刊行予定。2,200円。

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『loneliness books』
店主の潟見陽さんはブックデザイナーとしての顔も持つ。現在、韓国人の作家、写真家たちとともに東京のクィアカルチャーに関わる人々を取材した『TRAILER ZINE』も制作。お店の詳細はHP(qpptokyo.com)にて。

photo/
Ryu Maeda
text/
Daiki Yamamoto

本記事は雑誌BRUTUS935号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は935号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.935
始まりの服。(2021.03.15発行)

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