エンターテインメント

『夏時間』

みんなの映画 by Takashi Homma

No. 935(2021.03.15発行)
始まりの服。
『夏時間』監督・脚本:ユン・ダンビ/出演:チェ・ジョンウン、ヤン・フンジュ、パク・スンジュン、パク・ヒョニョン、キム・サンドンほか/渋谷ユーロスペースほかで上映中。全国順次公開。 ©2019 ONU FILM, ALL RIGHTS RESERVED

あの夏から始まる 家族の物語に大きな拍手を!

ホンマタカシ(以下H)
『はちどり』(*1)も好きだけど、ユン・ダンビ監督(*2)の『夏時間』もいいね。
BRUTUS(以下B)
どちらも女性監督で、かつ長編デビュー作だったり、少女の思春期を描いていたり、『はちどり』の再来といわれています。
奥さんに逃げられた旦那と、2人の子供がおじいちゃん家に、昼だけど夜逃げして、そこに、また旦那との問題を抱えた叔母さんがやってきて、認知症気味のおじいちゃんとの新しい家族が出来上がる。拡大家族というか、集合して、また分離していく家族。本当にこれ、今の時代の問題だよね。
起こっている事象も流れる空気も、日常がそこにありました。
そこにお姉ちゃんの思春期が全開してね。「二重にしたい」とか、煮え切らない彼氏にイライラしたり、無邪気な弟がいなくなった母親に会うことに、また激怒したり……。なんだか、わかるよ 君の気持ち、みたいな(笑)。あと、良かったのは、みんな、いい人ってこと。いつ、半地下で、包丁で胸を突き刺したり、殺し合いが始まるの? って。そうじゃなくても、なんかひどいことが起きるんでしょって……、ドキドキしていたけど、特に何も起こらない。それがよかったなあ。それを描き切った監督の繊細さを感じたよ。あと、みんな言っていると思うけど、一番の主役は、あの家だね。それもこれも、そういう構成にした監督に本当に拍手です!

http://www.pan-dora.co.jp/natsujikan/

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*1

2020年公開。キム・ボラ監督、脚本。思春期特有の感情や人間模様を繊細に描いた作品。

*2

1990年生まれ。本作は第24回釜山国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭などで賞を獲得。世界的な注目を集めた。

本記事は雑誌BRUTUS935号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は935号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.935
始まりの服。(2021.03.15発行)

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