アート

【〜5月9日開催中】難解な本を読み解くように、自作を辿る。|『澤田知子 狐の嫁いり』

BRUTUSCOPE

No. 935(2021.03.15発行)
始まりの服。
澤田知子

 設営中の東京都写真美術館の展示室に立つのは写真家の澤田知子。時にスキンヘッド姿に、時にガングロギャルに、そして時に就職活動生に変装しながら、自らを被写体にした写真作品で外見と内面の関係について探究してきた彼女の大規模個展が、現在開催中だ。25年のキャリアの中で印象深かった出来事について、澤田は次のように語る。

「2010年前後は自分の手法に縛られて、スランプに陥っていました。抜け出せたきっかけは2012年、アンディ・ウォーホル美術館主催のレジデンスプロジェクトでハインツ社さんとコラボレーションした際に、初めてセルフポートレート以外の作品《Sign》を作ったこと。ケチャップのパッケージの文字を様々な言語に置き換えて撮影した作品なのですが、これを機に自分はセルフポートレート作家でもあり、タイポロジー(分類型)作家であるとも解釈できたんですよね。その後は納得感を持って制作に向き合えるようになりました」

 世の中に目を向ければ、この25年間には多くの変化があった。澤田が表出し続ける「外見と内面の関係性」で言えば、近年ルッキズム=外見至上主義への批判が高まりつつあるのもその一つ。彼女はその状況をいたって冷静に見ている。

「ルッキズム自体は今に始まったことではなくて、だからこそ私の作品は世の中に取り上げてもらえたのだと思います。今の状況はSNSが普及し誰もが本音を吐き出せるようになったからなのでしょう。ただ特に日本の場合は、女性誌などで“これじゃないとダメ”という教科書のような作られた正解があるので、もっと視野を広く持てたらいいなと。私が言うのも変ですが、人の外見って簡単に変わるので。余談ですが、アメリカのある整形外科の先生が、無理な整形を頼んでくる人に私の作品集を見せて、“人ってメイクやヘアスタイルでこんなに変わるよ”って伝えているそうです(笑)」

 話を戻すと今回の展覧会では、新旧のシリーズを組み合わせて構成され、展覧会全体が一つの新作として発表される。

「実は私自身、自らの作品を100%理解できているわけではないんです。何回読んでも理解できない本のように、その時の状況によって感じ方が変わっていく。だから今回の展覧会では、今の私が解釈する“澤田知子”を体験していただける機会にできればと思っています」

《Recruit》部分 2006年 発色現像方式印画 (100枚組3点)作家蔵 ⓒTomoko Sawada

『澤田知子 狐の嫁いり』

〜5月9日、東京都写真美術館2階展示室(東京都目黒区三田1−13−3 恵比寿ガーデンプレイス内☎03・3280・0099)で開催中。10時〜18時。月曜休(5月3日は開館)。一般700円。新作をプリントしたサイン付き限定ファイルバッグも販売される。

https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3848.html

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さわだ・ともこ

兵庫県生まれ。自動証明写真機で400回変装して撮られたデビュー作《ID400》で2000年度キヤノン写真新世紀特別賞ほか受賞多数。以来数々のセルフポートレート作品を発表し、各国で展覧会を行うほか写真集などを出版。

photo/
Ayumi Yamamoto
text/
Emi Fukushima

本記事は雑誌BRUTUS935号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は935号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.935
始まりの服。(2021.03.15発行)

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