【IZAKAYA】ゑすじ郎/居酒場 IGOR COSY SHINSEN

グルマン温故知新

No. 935(2021.03.15発行)
始まりの服。

日本が誇る「居酒屋」文化のワールドスタンダード。

酒肴の定番から家庭料理の一品までが揃い、酒もよりどりみどり。日本の食文化の底力、その象徴ともいえる居酒屋をアップデートする2軒が渋谷に登場。気軽さはそのまま、インターナショナルな視点で質と楽しさを追求し、新旧の酒場ファンを沸かせている。

【ゑすじ郎 ●渋谷】トップバーテンダーが手がけるカクテル居酒屋。

 渋谷〈The SG Club〉のオーナーで世界的バーテンダーの後閑信吾さん。次の一手は居酒屋ときた。目指すは「2020年代の東京居酒屋スタンダード」。海外に長く暮らし、上海にも店を持つ後閑さんが見てきた、外国人たちが熱狂する「IZAKAYA」を逆輸入的に再現した形だ。

 品書きにはネーミングから味つけまで一筋縄ではいかぬ料理が並ぶ。ぬたのようなブロッコリーの冷菜から、和洋中がミックスした担々ヌードルまで、いわく「居酒屋メニューのツイスト(カクテル用語で「アレンジ」)」。ニューヨークの繁盛店〈SakaMai〉で腕を振るった古河厚志シェフが厨房を仕切る。さらに、広島産有機レモンで仕込む自家製コーディアルベースのレモンサワー14種をはじめ、「サワー」の名を冠したカクテルがずらり。居酒屋でくつろぎながら、味わえるのはトップバーテンダーのクリエイション。馴染み深いスタイルの先に、世界の食のシーンの今も見える。

〈SakaMai〉で料理長も務めた古河シェフ。
ラムラム担々ボロネーゼ

ラム挽き肉を使った肉々しいミートソースにゴマペーストを加え、担々麺風に。ゴボウにレンコンと、食感も楽しい和の根菜もたっぷりと、各国の味が入り混じる。ソースをしっかりと絡めた中華の太麺は、シメとしてはもちろん、つまみにもぴったり。パクチーで爽やかな香味を添えて。1,500円。

ブロッコリー族の集会

ブロッコリーやブロッコリーニ、イエローとパープルのカリフラワーに、カリフローレ。野菜図鑑の1ページのような並びを「族の集会」と呼ぶセンスに脱帽。醤油漬けニンニクベースのピュレでぬたっぽく。800円。

イベリコ納豆餅

〈The SG Club〉のカクテルペアリングイベント『SG AIRWAYS』でシェリーに合わせ考案された一品。納豆をバターとペーストにして、イベリコの生ハム、餅と一緒に海苔で巻けば洒落たフィンガーフードに。500円。

龍やコイのアートを配した空間。ニューヨークのストリートカルチャーから着想。

【居酒場 IGOR COSY SHINSEN ●神泉】クラフトな焼酎をフレンチの技アリつまみと。

 ドリンクの推しは本格焼酎。氷を使わない水割りやソーダ割をワイングラスで味わえば、ふわりと香りが広がり、爽やかさから甘味へ味わいも変化する。「アルコール度数もワインくらい。原料の香りや造り手の個性をワインのように感じ、食事と合わせてほしい」と、丸山智博さん。ビストロ〈メゾンサンカントサンク〉系列4店舗のオーナー兼総料理長。店作りの力量も注目される腕利きが仕掛け人。

 旅や外国人クリエイターとの交流を通じ「都市に暮らす人が日常使いする場こそが、クールな場になり得る」と、早くから居酒屋の可能性に注目。次代の大衆酒場〈ランタン〉などを生み出してきた。ここはその発展形。締めサバにソース状の香り醤油を添えて、焼売にハーブの香りを纏わせてと、馴染みのつまみを生産者から仕入れる素材やフレンチの技法で、ワンランク上の味に。東京らしく、でもパリにもありそうな、ボーダレスな空気が心地いい。

店長はフランス料理店での修業経験もある山本誠也さん。
宮崎直送 黒岩土鶏のたたき盛り合わせ

丸山さんが味に惚れ込んだ黒岩土鶏で作る看板料理。宮崎県児湯郡高鍋町で赤土をついばんで育つ〈黒岩牧場〉の黒岩土鶏は、締まった身の噛み応え、力強い旨味が格別。ムネ、モモ、ササミの3部位をシンプルにたたきで。九州地方で親しまれている甘口醤油をつければ、焼酎との相性は完璧。1,500円。

炙り〆鯖 春菊醤油仕立て

旬魚の一品は居酒屋の華。神戸〈マルカン酢〉の米酢で締めたサバを軽い炙りに。春菊ペーストと醤油を合わせたグリーンのソースのほろ苦さが脂の甘味を引き立てる。レモンの酸を効かせたガリもよき箸休め。880円。

雲丹のせ笹豚焼売 ライムリーフの香り

豚挽き肉にホタテ、タケノコと、ベーシックな餡の焼売も、ライムリーフの香りを纏ったとたんにエキゾティックな味に。日本の居酒屋の必殺技“うにのせ”でリッチな海の旨味と愛嬌も添えた一品。900円(2個)。

厨房に面したカウンターが中心。奥に6人掛けの大テーブルも。
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ゑすじ郎

電話:03・6416・0608
営業時間:16時~20時(19時30分LO)。
酒:レモンサワー14種700円~、カクテル、日本酒800円~。
価格:アラカルトのみ約40種。つまみ500円~、肉料理1,700円~。
席数:カウンター6席、テーブル14卓28席。

東京都渋谷区神南1−9−4 NCビル2F。火曜・水曜休。JRほか渋谷駅ハチ公口から徒歩10分。2021年2月10日オープン。チャージ500円(お通しの一口マティーニ付き)。〈The SG Club〉は世界的バーランキング「The World's 50 BEST Bars」
で2020年に10位を獲得。後閑さんが手がける上海〈Speak Low〉〈Sober Company〉渋谷〈The Bellwood〉と合わせ、海外からも注目されている。

居酒場 IGOR COSY SHINSEN

電話:03・6455・1720
営業時間:11時30分~13時30分LO(平日のみ)、18時~23時LO。
酒:本格焼酎約10種580円~、生ビール650円~、サワー520円~。
価格:アラカルトのみ約20種。つまみ450円~、シメ(食事)700円~。
席数:カウンター8席、テーブル1卓6席。立ち飲みテーブル2卓。

東京都渋谷区円山町18−6。日曜休。京王井の頭線神泉駅南口からすぐ。2020年12月21日オープン。テーブルチャージ500円。本格焼酎はロック、水割りなどのほか、時季替わりの前割り、金魚(唐辛子サワー)やレモングラスほうじ茶割りなど、さまざまな飲み方を用意。シメパリ風フォー1,000円、デザートはつまみになるチョコレートムース630円と、行き届いている。昼は定食1,000円~。

photo/
Naoki Tani
文/
佐々木ケイ

本記事は雑誌BRUTUS935号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は935号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.935
始まりの服。(2021.03.15発行)

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