エンターテインメント

ギクシャク感に惹かれるのは、時代のせい?|髙城晶平 → 佐久間宣行

佐久間宣行のカルチャー交歓!

No. 934(2021.03.01発行)
なにしろラジオ好きなもので③

 はじめまして! 髙城です。前回紹介していただいた『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』興味深く拝見いたしました。例えば『トイ・ストーリー』『インサイド・ヘッド』『リメンバー・ミー』などのピクサー作品は、「忘却」を絶対的な恐怖として描いてきたように思うんです。対してこの作品は「存在したものが忘れ去られることはない、そのために物語があるのだ」と力強く訴えているのが印象的でした。ジブリ哲学に近いのかな。また個人的には、滑らかな動きでストップモーションアニメであることを忘れてしまうようなシーンよりも、ものが動いているギクシャク感が残されている部分にこそ感動がありました。そこで僕が佐久間さんに紹介したいのは『クオリティランド』というSF小説です。AIとアルゴリズムによってすべてが管理された近未来社会を舞台にしたこの作品には多くのアンドロイドが登場するのですが、彼らは国政などの複雑な仕事をいとも簡単にこなす一方で、コーヒーをこぼさずに運ぶような単純作業ができません(これをモラベックのパラドックスといいます)。不思議なことに、人はロボットの完璧さよりもコーヒーをこぼしてしまうギクシャク感の方をより愛するようです。何でもコントロールできるようになりつつある時代だからこそ、コントロールを失うギリギリのところに神が宿る。音楽もお笑いも同じことが言えるかもしれませんね?

『クオリティランド』マルク=ウヴェ・クリング/著 森内薫/訳

恋人や仕事・趣味までアルゴリズムで決定される究極の格付け社会において、アンドロイドが大統領選に立候補。役立たずの主人公が欠陥ロボットを従えて権力に立ち向かう爆笑SF小説。2018年にはドイツSF大賞を受賞。河出書房新社/2,900円。

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髙城晶平

たかぎ・しょうへい/1985年東京都生まれ。ceroのボーカル、ギター、フルートを担当。ソロプロジェクト〈Shohei Takagi Parallela Botanica〉でも活躍している。

佐久間宣行
さくま・のぶゆき/1975年福島県生まれ。テレビ東京プロデューサーとして『ゴッドタン』『あちこちオードリー』等を担当。『オールナイトニッポン0(ZERO)』に出演中。

編集・文/
福島絵美

本記事は雑誌BRUTUS934号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は934号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.934
なにしろラジオ好きなもので③(2021.03.01発行)

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