旅と地域

303日間、15ヵ国を巡る旅で見つけた世界の紙々。

BRUTUSCOPE

No. 934(2021.03.01発行)
なにしろラジオ好きなもので③
タイの「サーペーパー」は、約45度で立てかける。気温が高く、1日で乾燥する。
ネパールの「ロクタペーパー」はヒマラヤの標高2, 500m以上で自生する植物「ロクタ」 が原料。工房は山の上にあることが多い。
メキシコの「アマテ」。山あいに住むオトミ族の職人が繊維を叩き、編み込んで作る。初めて見る紙の製法に浪江さんも驚いた。なくなりつつある手仕事の一つ。

まだ見ぬ紙を求めて。

手仕事の紙を残したい、という思いで活動を行う〈kami/(かみひとえ)〉の浪江由唯さんの303日間の旅が『世界の紙を巡る旅』という一冊になった。

 彼女と手仕事の紙との出会いは大学2年のとき。青春18きっぷを使い、四国を1周した際に訪れた、高知県の工房兼民宿〈かみこや〉の手漉き紙体験だ。

「原料となる樹皮を剥ぐ作業から体験し、手漉き紙に興味を持ちました。四国の旅ではネパールの手漉き紙に関する古い本にも出会って、大学の研究テーマが自ずと決まったんです。だから紙のために海外へ行ったのは、ネパールが最初。そこで見た紙のある風景が美しくて、忘れられませんでした」

 もう一度紙を巡る旅をしようと思い立ったのは、社会人2年目の夏。退職届を出した半年後には飛行機に乗っていた。取材をしつつ、集めた紙は段ボール13箱分にも及んだそうだ。

「紙工房や印刷所はグーグルマップで探して、取材から撮影まで一人で行いました。現地の紙で書いた手紙の販売もしましたね。実はその売り上げが旅の予算の半分を占めていたんです。一人で細々とやってきたことが、帰国してから本になり、色々な方の協力もあって広がり始めているのがとても嬉しいです」

 世界を巡り、環境問題やもの作りに対して強い気持ちを持つ職人や、なくなりつつある紙の現場などにも遭遇し、これからも紙に携わりたいという気持ちが強くなったという。

「世界の紙を見る願いが叶い、次は日本の紙のことを知るために和紙の産地、愛媛県の内子町に移住する予定です。和紙作りの輪の中に入りつつ、世界の紙を扱う店も始めて、紙一枚の可能性をさらに伝えていけたら、と考えています」

『世界の紙を巡る旅』

表紙にはネパールの工房から直輸入した「ロクタペーパー」を使用。表紙は700パターン以上あり、本文用紙は11種類の紙を使用しているので、見て触って楽しめる。kamihitoe.official.ec/で販売中。2,600円。

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Nozomi Hasegawa

本記事は雑誌BRUTUS934号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は934号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.934
なにしろラジオ好きなもので③(2021.03.01発行)

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