エンターテインメント

レコード蒐集家が独白する言い訳と、ロマンと。

BRUTUSCOPE

No. 934(2021.03.01発行)
なにしろラジオ好きなもので③
『レコードは死なず』70年代の幼少期からレコードを蒐集していたエリック・スピッツネイゲル。CDへの移行期などで処分したレコードコレクションを再び集めることに。日本版の表紙は、よしもとよしともが担当。P-VINE/3,150円。

ポスト『ハイ・フィデリティ』と称賛される物語の本当の魅力。

中古レコード店を舞台にしたニック・ホーンビーの小説『ハイ・フィデリティ』。2000年に映画化されたのに続き、20年にはゾーイ・クラヴィッツ主演でドラマ化された。物語の主な舞台となるむさ苦しい店内も、少し華やぐかと思いきや、相変わらずナードの集合場所に……。映画とドラマに通底しているのは、大人なのにレコード最優先、音楽に関する持論は決して曲げない人物たち。面倒な曲者しか出てこないのに、なぜ『ハイ・フィデリティ』は愛され続けるのだろうか。

 ジャーナリストのエリック・スピッツネイゲルの『レコードは死なず』が、日本でも発表された。ザ・ルーツのクエスト・ラブから「今まで買ったレコードは一枚も売ったことがない」という言葉に感化され、自身が売り飛ばしてきたコレクションをすべて買い直していくという物語。リプレイスメンツのプレミア盤を買おうか迷うくせに、どこでも買えるボン・ジョヴィのアルバムは、20年前の元カノから奪還しようとする。そんな矛盾多き行動はお金がないためであったり、ちょっとした下心から来るもの。しかし、彼の言い分にはウソや虚栄心がない。それゆえ、理由はどうしようもないにせよ、なぜか途中から主人公のエリックがかわいらしく感じてくるから不思議だ。思えば、車から古着まで、嗜好が少し強い人によくあるパターン。仲のいい友人に必ずこんな人物がいるからより身近に感じるのではないだろうか。

『レコードは死なず』の主人公には妻と子供がいる。『ハイ・フィデリティ』と同じような愛すべきロクでなしだが、『レコードは〜』はファミリードラマとしての趣もある。そんな物語は現在映画化が進行しているという噂も。ジョナ・ヒル主演でどうだろう。

本書登場の、レコード再発され続ける名盤4枚。

自主レーベルから立身、フォークを基盤に鋭いギターサウンドでブレイクしたリプレイスメンツが1984年に発表した『レット・イット・ビー』(1)は、ピクシーズ(2)にも大きな影響を与えた。89年『ドリトル』はCDとの端境期に発表され、プレス枚数が少なかったことからオリジナルLPは激レア。オールドスクール・ヒップホップの代表、シュガーヒル・ギャング(3)が80年に発表した歴史的アルバム。そして、デッド・ケネディーズ(4)『暗殺』。ハードコアの金字塔としてももちろん、ジャケット写真はいまだにTシャツ化されるほど人気。

(1)『レット・イット・ビー』
(2)ピクシーズ
(3)シュガーヒル・ギャング
(4)デッド・ケネディーズ『暗殺』
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photo/
Natsumi Kakuto (Book)
text/
Katsumi Watanabe

本記事は雑誌BRUTUS934号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は934号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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なにしろラジオ好きなもので③(2021.03.01発行)

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