エンターテインメント

ラッパーの環ROYが飛び込んだ、旬や流行にとらわれないもの作りの世界。

BRUTUSCOPE

No. 933(2021.02.15発行)
アイドルマスター

不規則さが映す、多様性。

 写真家の川内倫子やダンスカンパニーのコンドルズなど、近年様々な表現者が絵本作りに参加している。アーティストの環ROYもその一人。彼が手がけるのは、ラッパー特有のリズミカルな表現や言葉遊び、2児の父としての目線も詰まったユニークな絵本たちだ。絵本作りはかねての夢だったと環は話す。

「この世界でもの作りを続けていく中で、流行に左右されない普遍的な表現で作品を残したいと思うようになりました。その一つの形が絵本でした。音楽は一人で作ることが多いですが、絵本制作は編集者と二人三脚。様々な視点を提示し合って、言葉を作っていきます」

 3冊目となる新刊『ほら ぴったり』では翻訳にも初挑戦。友達探しの旅に出た主人公が、自分の「ぴったり」を模索する姿はどこか明るく、前向きな気持ちにしてくれる。

「原作はイギリスの作家のもので、独創的な質感の絵が印象的。丸や三角など同じ形が繰り返されるものの、一つずつ塗り方やかすれ具合が異なっていて。その不規則さが、豊かな表現につながっていると感じます。世界観を保ったまま訳すこと、日本語独特の気持ちいいリズム“七五調”で収まる言葉作りも意識しました」

 今作のテーマは「多様性」。同種同族が大半の日本で、人種や個性など様々な多様性と向き合える絵本は少ない。環は自身の音楽と絵本の両方で同じ思いを伝えていると振り返る。

「ある場所ではハンデと解釈されることでも、場所を変えればアドバンテージになることがあります。スポーツを例にすると、バスケットボール選手は背が低いと不利ですが、競馬のジョッキーは背が低い方が有利。個性を無理に変えなくても、広い世界を見渡せば自分に合う場所が見つかりますね。今見えているものだけで悲観的にならないでほしい、と思っています」

『ほら ぴったり』

主人公の「さんかく」が、異なる形の友達と交流し、自分と他者の違いや共通点を考えていく物語。文はナオミ・ジョーンズ、絵はジェームズ・ジョーンズ、訳は環ROYが担当。ブロンズ新社/1,400円。

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環ROY
たまき・ろい/宮城県生まれ。絵本作品にオオクボリュウらと制作した『まいにちたのしい』(ブロンズ新社)、『ようようしょうてんがい』(福音館書店)がある。

text/
Yoko Hasada

本記事は雑誌BRUTUS933号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は933号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.933
アイドルマスター(2021.02.15発行)

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