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テーマ〈続々・支持者〉

平常心ブラザーズの平常心を失くす日。

No. 932(2021.02.01発行)
音楽と酒。
やつい
昔の文豪って、妙にグルメ扱いされているじゃないですか。あれってどうなんだろうと。太宰治が好きだったとか、あんまりおいしくなかったりする。
宮沢
織田作之助が好きだったっていうカレー屋が大阪にあって、織田作カレーって名前がついてるけど、うまいと思えなかった。
やつい
文豪だからって、グルメなわけじゃないと思うんですよ。
宮沢
文豪の定義がちょっと違うかな。ま、ドストエフスキーがグルメって話は聞いたことがないな(笑)。
やつい
当時は、普通の人は文章を発表する機会がないわけで、やっぱり文章がうまいから、みんな食べてみたくなったんですかね。
宮沢
要するに文学主義なんだよ。文学的なものが偉いっていう。もちろん太宰以前からすごい作家はいっぱいいるけど。権威とか、マウントとかって時代で変わる。かつて文学主義に権威があったけど、今はIT長者が権威を持ってたりするから、ベンチャーの社長がおいしいっていう店に客が群がる。でも、全然うまくない(笑)。
やつい
当時は、文章を書く機会に恵まれなかった在野のグルメがいたんだろうなあと。
宮沢
小津安二郎が行ってたとんかつ屋が上野にあって、映画にも出てくるけど、そこはおいしかったよ。
やつい
今は、タモリさんだけが妙においしい店の“権威”になってますよね。
宮沢
タモリさんに関して、なるほどなと思ったのは、名古屋が嫌いとか、オフコースが嫌いとか、ある時期までは嫌いなことを言っていたけど、今は自分の好きなことを言うと。タモリさんのタレントとしての大きな資質の一つは、「今、私が何を求められているのか」をすぐに察知できること。最初に密室芸をやっていた時は、好事家たちが集まってその人たちのために芸を演じる。それが『笑っていいとも!』になるとお昼にテレビで求められるのは、こういうことだろうと的確に判断する。
やつい
理論とか言わないですもんね。友人の岸本加世子さんにタモリさんオススメのタンメン食べに行こうって連れていかれましたけど(笑)、うまかったです。
宮沢
タンメンはね、東中野の〈十番〉っていう店がうまい。
やつい
宮沢さんも権威になるかしら(笑)。
(続く)
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宮沢章夫

遊園地再生事業団主宰。著書に『長くなるのでまたにする。』ほか、多数。

やついいちろう

エレキコミック。著書に『それこそ青春というやつなのだろうな』がある。

編集・写真・文/
村岡俊也

本記事は雑誌BRUTUS932号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は932号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.932
音楽と酒。(2021.02.01発行)

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