エンターテインメント

鴨田潤の人生と音楽。 HIP HOP、FOLK 、HOUSEまで、ジャンルを横断する男。

BRUTUSCOPE

No. 932(2021.02.01発行)
音楽と酒。
鴨田 潤

本名の「鴨田潤」名義での弾き語り作品『一』や、ハードコアが中心だった2000年代の日本語ラップに新風を吹き入れた「イルリメ」としてのラップ作品、バンド・(((さらうんど)))での活動、UKのレーベル〈Black Acre〉から「JUN KAMODA」名義でリリースされるダンストラックなど、その音楽性の幅はシーンを見渡しても比肩するものは少ない。また二階堂和美などのプロデュースワークや自身のレーベル〈Jun Records〉からのアーティスト輩出など柔軟で多角的な活動も彼の魅力だろう。

 そういった動きの連綿は、ここ数年活動の中心となっているJUN KAMODAでのトラックにも強く反映されている。例えば本人のラップがフィーチャーされた『Surreal Tongue in Northern Osaka』や、在日ファンク『爆弾こわい』をリエディットした『Funky Protection』などは、これまでの鴨田のキャリアが収斂した作品群とも言えるし、ポエトリーとサンプリングされたディスコビートをラフな音質で衝動的に纏めたような『Nightmare Club』は、Raw Houseムーブメントとも近接し、その作品は多くのDJにプレーされている。

 そして、2月中旬に新たにリリースされる7inchシングル「ゆめいどりいむ」。コーラスにカーネーションの直枝政広が参加した「ゆめいどりいむ(Vox)」は、彼岸と此岸の狭間を表現したような鴨田のラップをコズミックかつローファイなシンセ音が取り囲み、ブレイクビーツが下支えするサイケデリックな一曲。より楽曲の夢幻性を高めた「ゆめいどりいむ(Dub)」と併せて、決して短くないキャリアを統合するような楽曲性は、音楽を通して彼自身のキャリアと人生を肯定するような豊かさを感じさせ、彼の新たなステップを印象に残す。

鴨田潤を知るための4作品。

「ゆめいどりいむ」は、『www.illreme.com』(1)収録の「トリミング」が彼の出身地である大阪のサイケバンド〈LABCRY〉の楽曲を下敷きにした事実からの連続性を感じさせる。またEVISBEATS/鴨田潤/前田和彦で制作されたオリジナル楽曲を、矢野顕子を迎えた形で再構築した「いい時間 featuring 矢野顕子」(2)は、シティポップ/ニューウェーブ再発見の先鞭とも言える動きだった(((さらうんど)))での活動(3)とも接続。そういった彼の歌詞群から100本を採った詩集『言葉の星座』(4)もまた、彼の着地点の一つである。

(1)『www.illreme.com』
(2)「いい時間 featuring 矢野顕子」
(3)
(4)『言葉の星座』
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かもだ・じゅん

2000年に「イルリメ」として楽曲を発表し、ラッパーECDとのユニット・ECDILLREMEなど活動はさまざま。音楽以外にも「鴨田潤」名義で、小説『てんてんこまちが瞬かん速』を発表。

text/
Shinichiro“JET”Takagi

本記事は雑誌BRUTUS932号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は932号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.932
音楽と酒。(2021.02.01発行)

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