佐久間です。今回のゲストは女優の岸井ゆきのさん。何度かご一緒したお仕事の中でも特に印象深いのは、2019年にゲスト出演していただいたシチュエーションコント番組『ウレロ 未開拓少女』です。とんでもない量のセリフを放つクセのある役だったのですが、客前一発本番のプレッシャーの中最後までよどみなく演じ遂げて、さすがだなと。少女と大人の女性、笑いとシリアス、どちらにも振り切ることができる勘の良さがあって、いつも出演作品を観ては勝手に尊敬しています。普段から映画や舞台などをたくさん吸収してお芝居に生かしている岸井さんにオススメしたいのは、三谷幸喜さんの傑作舞台『コンフィダント・絆』。物語は稀代の画家、ゴッホやゴーギャンら4人の芸術家たちの無名時代の友情を描いているのですが、彼らの中に一人だけ凡才が紛れていて。性格が良くても報われない、才能の残酷さを切なくもユーモラスに描いていて、その筆致がとにかく素晴らしいんです。また作中、堀内敬子さん演じるルイーズというクセのある女性が登場するのですが、醸している空気や佇まいがなんとも魅力的。わかりやすい王道のヒロインではないけれど、中井貴一さんや生瀬勝久さんら当代きっての役者陣の中で独特な存在感を放つ堀内さんのミューズ感が、岸井さんのまとう空気ともどこか通じるなと思いました。僕も再演を願ってやまない大好きな作品なのでぜひ!
『コンフィダント・絆』
1888年パリ。芸術家たちの間に真の友情は成り立つのか? 2007年にパルコ劇場で上演された。作・演出:三谷幸喜/出演:中井貴一ほか/本作が収録された『三谷幸喜 芸術家三部作 愛蔵版』ブルーレイBOXがPARCO STAGE SHOPで販売中。
- 編集・文/
- 福島絵美
本記事は雑誌BRUTUS931号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は931号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。