【新しい町寿司】舟町 鮨やました/鮨 一喜

グルマン温故知新

No. 931(2021.01.12発行)
なにしろカスタード好きなもので。

おまかせU−10,000円! ちょうどいい寿司店へ。

予約困難に加え高級化の加速が進み、ハードルがぐんと上がった寿司だが、ここに来て新たな潮流が! 確かな腕前ながら「気軽に親しんでもらいたい」と、お値打ちなおまかせ握りを楽しませる四谷三丁目と千歳船橋の2つの新店が登場。どちらも末長くご贔屓に!

【舟町 鮨やました ●四谷三丁目】バランスを大事にした“食べ疲れ”しない寿司。

 日頃の行いがいいのか、店主の山下篤史さんは引きが強い。寿司の名店が点在する四谷界隈で、外苑東通り沿いの好立地に巡り合えた。お米だってそう。ふらりと入ったのが、ブレンドのプロとして有名な麴町の米屋。北海道産をメインに、好みのオリジナル米を開発してもらった。

33歳という若さで一国一城の主人となった山下篤史さん。

 東京・赤坂〈寿司田〉グループで一通りの仕事を身につけ、独立。お任せコースは焼き物、煮ダコとシンプルな寿司屋のつまみに始まり、握りへと続く。「魚がおいしいのは大前提」と吟味した素材とのバランスを大事に、米の食感や味わいも立たせるのが流儀。やや甘めにして酢を効かせるさじ加減で生臭みもなく、次から次へ食が進んでも最後まで食べ疲れることはない。「魚のポテンシャルに助けられている。ほかが高いだけで、うちでは十分いいお値段をいただいています」と、実に謙虚。

 持ち前の人柄の良さと誠実さで、厳しい時期のオープンながら筋のいい常連に愛されている。

握り

左上から時計回りに、甘鯛、カワハギ、車エビ、コハダ、赤貝。甘鯛は軽く塩をしてねっとりとした舌触りに。カワハギはクリーミーな肝添え。季節によりボタンエビも登場。コハダは酢も塩もいい塩梅。ほかにマグロのヅケ、中トロ、ウニ、卵、アナゴ等で構成。料理はすべてお任せコース10,000円の一例。

白子ポン酢

いよいよ盛りを迎えるふっくらとした北海道産の白子は前菜としてシンプルにポン酢で提供する。舌触りはクリーミーでかつ濃厚な味わい。ぬる燗や熱燗と合わせて楽しみたい。料理は季節に応じて内容が変更される。

白甘鯛の焼き物

お任せコースから、季節の旬魚を使った焼き物。白甘鯛はひと塩して余分な水分を抜き、丁寧に火を入れて。脂がのって身はしっとりと軟らかく、味わいは上品そのもの。清々しいスダチの風味が旨味を一層引き立てる。

設えは絵画のみでシンプルに。白木のカウンターが映える店内。

【鮨 一喜 ●千歳船橋】ちょっとした贅沢気分が味わえる庶民派寿司。

 高級店にも引けを取らぬネタに割烹級の料理、居酒屋ばりの日本酒の品揃え。1万円でお釣りが来る月2で通いたい新店だ。

 店主は〈駒形どぜう〉、銀座の寿司店で腕を磨いた喜代永隆文さん。コースは前菜に始まり、握りの合間に料理を挟む構成だ。米は宮城米東北194号と新潟産みずほの輝きをブレンドし、赤酢のシャリに。「魚と一体になった時のおいしさを実感してほしくて」と、最初に酢飯の握りを食べさせるのも目新しい。

〈駒形どぜう〉和食部門や銀座〈鮨 きよし〉も経験した喜代永隆文さん。

 旬の白身魚からスタートし、前半の山場は〈やま幸〉から仕入れる青森・大間の大トロ。酒肴のあんを添えたプレーンな茶碗蒸しは2時間かけただしを飲ませる中椀をイメージしたもの。後半はきりりと締めたコハダ、火入れがいいエビ、濃厚なウニ。しっかり味を入れてタレを控えたアナゴ、甘くて旨いかんぴょう巻き。目利きよし、仕込みよし。「寿司の魅力を知ってもらうきっかけの店になれたら」と心意気もよしの三拍子が揃う。

握り

左上から時計回りに、カワハギ、サワラ、コハダ、大トロ、スミイカ。サワラは皮目を生かした握り。江戸前らしいコハダ、スミイカはスダチと塩で。マグロは季節で産地や部位を変更。ほかカステラをイメージして改良中の卵、甘く炊き手巻きにするかんぴょうも。料理はすべてお任せコース8,000円〜の一例。

焼き胡麻豆腐

前菜から定番の一品。表面に香ばしい焼き目をうっすらとつけた、風味豊かなゴマ豆腐。昆布だしをベースに蜂蜜で自然の甘味を加えたゴマソースと、香り立つすりゴマを添えて。器は大和織部の作家・金本卓也さん作。

海老芋と銀杏

旬のエビイモは丁寧に引いた自慢のだしを煮含ませてから、唐揚げに。表面はサクッと、中はねっとりと、エビイモ本来の味を引き立てた上品な味わい。彩りに大粒のギンナンを添えて。料理の内容は季節ごとに変更される。

改装したばかりの店内。入口付近にテーブル席も。
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舟町 鮨やました

電話:080・2365・1697
営業時間:17時30分〜22時最終入店。
酒:ビール600円、日本酒900円〜、焼酎600円〜。
価格:お任せ握り12貫7,000円〜、お任せコース10,000円〜。
席数:カウンター8席。

東京都新宿区舟町8−3 新宿舟町ビル1F。月曜休。交通:東京メトロ四谷三丁目駅2番出口から徒歩4分。2020年7月21日オープン。品書きはお任せ握り12貫7,000円のほか、刺し身、焼き物、煮物、酢の物等から4〜5品、握り9貫のお任せコース10,000円がメイン。「ネタは豊富ではありませんが」と前置きしつつも、お好み握りにも応じる。日本酒4種、焼酎、サワー、ウイスキー、ワインも。

鮨 一喜

電話:03・6413・6168
営業時間:12時30分〜、18時〜、20時30分〜(3部構成)。日曜・祝日はデータに。
酒:生ビール700円、日本酒700円〜、グラスワイン(赤・白)700円。
価格:お任せコース8,000円、ランチコース4,000円。
席数:カウンター6席、テーブル2卓6席。

東京都世田谷区桜丘2−29−21 第一稲荷森ビル105。不定休。日・祝12時30分〜、18時〜、19時30分〜(3部構成)。交通:小田急小田原線千歳船橋駅南口から徒歩2分。2020年8月9日オープン。テーブルチャージ1人300円。前菜、刺し身、握り、本日の肴、巻き物等のお任せコースほか握り各種300円〜、お持ち帰りメニューはばらちらし3,000円、太巻き2,800円、特製ばってら2,500円。

photo/
Yoichiro Kikuchi
文/
粂 真美子

本記事は雑誌BRUTUS931号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は931号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.931
なにしろカスタード好きなもので。(2021.01.12発行)

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