ライフスタイル

テクノロジーの進化に、嬉しいやら、寂しいやら。

生島淳の僕しか知らないアスリートの秘密

No. 930(2020.12.15発行)
世の中が変わるときに読む本。

 本屋さんでサイエンス系の本棚を眺めていたら、毛色の変わった本があった。タイトルが『スポーツを変えたテクノロジー』、著者はイングランド人。「はじめに」の部分を読んでいたら、著者の博士論文のタイトルに笑った。「ゴルフボールがグリーンに落下した衝撃を計測する装置とその試験法」。ずいぶんとムダな研究をした人がいるもんだと思ったが、なんだか友達になれそうな気がした。

 ムダなことをマジメに研究した人の本は、面白い。この本では、陸上競技、テニスからパラスポーツまで、あらゆるスポーツはテクノロジーの進化によって変化してきたことがまとめられている。中でも、1990年代に広く用いられるようになったカーボンファイバー製品は、スポーツを変えたという。わかりやすいところでは、テニスのラケット。カーボン素材が使われるようになってからボールがよく飛ぶようになり、青春時代にウッドを使っていた人たちは、カーボン製品の登場に大いに戸惑ったはず。そのほか、自転車やボート、それにカーボン竹刀まであるご時世だ。

 陸上の厚底シューズも、ソールの中にカーボンプレートが内蔵されたことで前方への推進力が高まり、好記録が連発。この12月から、トラックではソールの厚さの規定が出来ましたけどね。それにしても、記録って人間の進化というよりも、テクノロジーの進化だったのかな。ちょっと寂しいけどね。

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いくしま・じゅん

スポーツジャーナリスト。近著に『どんな男になんねん』などがある。

イラスト/
土車大八

本記事は雑誌BRUTUS930号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は930号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.930
世の中が変わるときに読む本。(2020.12.15発行)

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