【中国料理の名店、次の一手】馬小房/桃仙閣 東京

グルマン温故知新

No. 929(2020.12.01発行)
餃子♡愛

名店のDNAが息づく新世代チャイニーズ。

東京・六本木〈華都飯店〉と島根・松江〈桃仙閣〉。いずれも半世紀以上の歴史がある中国料理店だ。この秋、それぞれの3代目と2代目がそのスピリットを継承する新店をオープン。本店を知る人も知らない人も楽しめる、期待のニューフェイスだ。

【馬小房 ●広尾】都内屈指の名店が手がける、小体な中華バル。

 今夏話題を呼んだ〈EAT PLAY WORKS〉の飲食フロア〈THE RESTAURANT〉に、この10月、新たな店が加わった。六本木にある中国料理店〈華都飯店〉の3代目、馬衣真さんがプロデュースする、カウンター主体のカジュアルチャイニーズだ。ニューヨークのチャイナタウンにある「家常菜(家庭料理)」の店をイメージしているという。

 カウンターの中で鍋を振るシェフ・宮下翔太さんは、調理師専門学校卒業後〈華都飯店〉へ。途中3年ほどほかの四川料理店で“武者修業”をしたのち、カムバックして7年。料理への熱意を買われ、今回この新店を任された。「カウンターキッチンで働くのは初めてですが、お客様とじかに接することができてとても嬉しいです」と宮下さん。

「白い麻婆豆腐を」という馬さんのお題を受けて誕生したこの店ならではの新作もあれば、よだれ鶏や上海焼きそばなど本店のレシピを守る料理も。宮下さんの意欲作も日々増加中だ。

さりげなくおすすめの品を伝えてくれるなど、接客もスムーズな宮下さん。
白的麻婆豆腐

挽き肉の代わりにカニ、エビ、イカのミンチを使い、豆板醤は使わずに白く仕上げた麻婆豆腐は、お店のシグネチャーメニュー。台湾の山胡椒「馬告」のレモングラスのような香りと、青唐辛子の刺激、青山椒オイルの爽やかな余韻が印象的な一品だ。1,600円。「黒的麻婆豆腐」1,500円もある。

牛スネ肉の煮込み青山椒ソース

八角や陳皮などの香辛料、香味野菜と共に煮込んだスネ肉を、ネギやパクチー、山椒を細かく刻んだペーストを山椒オイルでのばした「椒麻ソース」で和えて。山椒の痺れ感が心地よく、お酒が進む冷菜。1,300円。

上海焼きそば

コシのある食感の蒸し麺を、強火でパラッと炒め、シンプルで飽きのこない焼きそばに。具は潔く、シャキシャキのモヤシと黄ニラのみ。味つけは、濃い色もつく中国醤油がベース。〆にも、ツマミにもなる。1,500円。

写真右奥には、2人がけのテーブルが。

【桃仙閣 東京 ●六本木】島根の有名中国料理店が東京に進出。

 2017年に南麻布の住宅街に開店し、和の要素を取り入れた緻密なコース料理で評判の中国料理店〈茶禅華〉。そのオーナーでサービスを担当していた林亮治さんが、六本木通りのビルに新店をオープン。酢豚やエビチリから、フカヒレや北京ダックまでアラカルトで注文でき、深夜まで営業、かつ、落ち着いた雰囲気で食事を楽しめる。

数多くのメニューを手際よく仕上げる林さん。

 実は、林さんの実家は島根・松江で誰もが知る中国料理店〈桃仙閣〉。林さんは〈茶禅華〉を開くまで、〈筑紫樓〉や〈麻布長江〉で修業を重ね、〈桃仙閣〉で料理長を務めた、れっきとした料理人だ。名実ともに自身を育んだ店の屋号をひっさげて「原点に返った思いです」。

 60種以上の料理が並ぶ大きなメニューの内訳は、父から継承した本店譲りの料理と、林さんが考えた東京だけの料理が半々。「当たり前の仕事を丁寧にすれば、お客様は必ず喜んでくれる」という父の教えを受け継ぎ、上質なスタンダードを目指す。

天津飯

たっぷりとかけられた飴色のあんの中央、ふんわりとしたカニ玉に入っているのは鳥取・境港産のズワイガニと長ネギのみ。本店譲りのシンプルなレシピだ。だしの効いた上品な醤油あんは、舌がほっとするような優しい味わい。店名入りのレトロな趣の丼は、本店の倉庫で眠っていたものだそう。2,180円。

穴子の唐辛子と山椒の香草炒め

卵入りの衣を薄くつけてカリッと揚げたアナゴを、唐辛子、青ネギやパクチーといった葉物野菜、クミンをはじめとしたスパイスと炒め合わせて。香辛料の香りや辛味が、アナゴの味わいを引き立てる。2,080円。

豚足の醤油煮込み

「豚足が大好き」という林さん自慢の逸品は東京店のオリジナル。皮付きのまま下ゆでしてから、醤油をまぶして揚げ、さらに煮込んで……とひたすら丁寧な調理が、すっきりとクリアな仕上がりの秘訣。1,880円(1個)。

ブラウンが基調の、温もりを感じる設え。写真奥には、2人用個室が4室ある。
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馬小房/マーシャオファン

電話:070・2190・7543
営業時間:15時〜22時LO。
酒:ビール600円〜。ハイボール600円〜。グラスワイン900円〜。
価格:冷菜650円〜。点心800円〜。温菜1,500円〜。麺飯1,450円〜。
席数:カウンター6席。テーブル3卓12席。

東京都渋谷区広尾5−4−16 GEMS HIROO CROSS 2F。月曜休。交通:東京メトロ広尾駅から徒歩1分。2020年10月9日開店。フレンチビストロからスナックまで17の飲食店が軒を並べる〈THERESTAURANT〉の中にある。料理に合わせるドリンクは、ナチュラルワインに力を入れているほか、甕出し紹興酒も。グラス売りのほか、ボトルキープならぬ“甕キープ”も可能だ。現金支払い不可。

桃仙閣 東京

電話:050・3138・4343
営業時間:18時〜翌1時LO(土・祝17時〜)。
酒:ビール900円。グラスワイン1,000円〜。紹興酒1,600円〜。
価格:前菜680円〜。魚介料理1,880円〜。肉料理1,280円〜。点心420円〜。
席数:カウンター4席、テーブル3卓6席、個室7室20席。

東京都港区六本木4−8−7 六本木嶋田ビル B1。日曜休、不定休。交通:東京メトロ・都営大江戸六本木駅から徒歩1分。2020年10月1日オープン。松江の本店から点心師を連れてきたので、点心の種類も豊富。また、料理同様アルコールのラインナップも目を見張る充実ぶり。マディラ酒、シェリー酒、デザートワインもバイ・ザ・グラスで楽しめる。サービス料10%。

photo/
Hisashi Okamoto
文/
小石原はるか

本記事は雑誌BRUTUS929号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は929号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.929
餃子♡愛(2020.12.01発行)

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