『エリザベスタウン』(2005年、キャメロン・クロウ監督)という映画を見ていた時のこと。「男は物事を四角く見る。女は物事を丸く見る」というセリフが出てくるのですが、それを聞いてピカソの「泣く女」が頭に浮かんできました。きっと、「四角」という言葉が「キュビスム」につながったんだと思います。たくさんの立方体で構成された絵を見てアンリ・マティスが命名したといわれるキュビスムは、人物も静物も何もかもが幾何学的な形に変えられてしまうというちょっと不思議な絵画様式です。先のセリフは「男=論理的」「女=感情的」ということの暗喩だと思いますが、まあ、キュビストの中にはもちろん女性もいるんですね。スペイン生まれのマリア・ブランチャード(1881〜1932)という画家もぜーんぶ幾何学的にしてしまって、占い師がカードを操る場面を描いた上の絵では女たちがこぞってカクカクしています。どうでしょう、女性が“男性的な”四角い様式で描いたということについて、少し考えてみたいものです。
- 文/
- 中村志保
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