アート

「梯子」は果たして家具か、建築か。

BRUTUSCOPE

No. 927(2020.11.02発行)
映画監督論。

その絶妙なスケールに魅了された25歳が作るもの。

「梯子にすごく興味があるんです」

 そう話すのは新鋭作家、木暮春佳。「Endplaydevice」と称して撮影用のセットやショップのディスプレイを制作する傍ら、梯子に着目した作品作りを続けている。

「梯子は家具以上、建築以下の存在だと思っていて、その不思議なスケールに惹かれました。壁や床といった空間を成す要素にはならずに、あくまで道具として扱われている。階段と違って横幅が長かったとしても、同一線状に2人以上並ぶことのない、パーソナルなものでもあるんですよね」

 大学在学中はさまざまなサイズの梯子を制作するだけでなく、街で見つけた梯子を撮影し、時には上る。自分なりに研究を重ねながら梯子と向き合っていたという。

 えんじ色が目を引く右下の椅子は、以前制作した高さ2mほどの梯子の頂上に椅子を配した作品をベースにしたもの。日常でカジュアルに梯子を感じてほしいという思いを込めた作品だ。

「椅子の足置きに自然と足を引っ掛けて座っていただけるように、少しだけ座面を高くしているんです。足置きには梯子の足場“格”を意味する“rung”という言葉を記しました。小さなベランダや書斎など、あまり椅子を動かす必要がなく、一人の時間を過ごす場所で使ってもらえたら嬉しいです」

 脚の角度は地面に対して75度。これは梯子を壁に立て掛けて使用する際に、昇降しやすく足場が安定する適正角度で、意識せずとも梯子を体感できる作りになっている。

「請け負った仕事をやりつつ自分のペースで作品作りをするのが楽しくて。ゆくゆくは、どちらの制作も半々にできるようになりたいですね。来年には梯子にまつわる作品だけの個展をしたいなあと、計画中です」

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こぐれ・はるか

1995年群馬県生まれ。多摩美術大学出身。制作は間借りの工房と自宅で行っている。Instagram:@endplaydevice

photo/
Yuto Kudo (works), Natsumi Kakuto (product)
text/
Nozomi Hasegawa

本記事は雑誌BRUTUS927号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は927号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.927
映画監督論。(2020.11.02発行)

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