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【11月14日公開】佐橋佳幸と谷中敦が語る〈音響ハウス〉讃。|『音響ハウス Melody-Go-Round』

BRUTUSCOPE

No. 927(2020.11.02発行)
映画監督論。
谷中 敦(左) 佐橋佳幸(右)

〈音響ハウス〉45年の軌跡を追ったドキュメンタリー公開迫る。

日本のアビーロードスタジオとも呼ばれる〈音響ハウス〉は、1974年独立系録音スタジオの先駆けとして誕生した。以来、日本を代表するアーティストの名盤を数限りなく生み出し続けている  。

谷中敦
主演男優の佐橋さん、今日はよろしくお願いします。
佐橋佳幸
もう、いきなり勘弁してくださいよ(笑)。出演者のトップに名前が載ってるのは、あくまで登場順ですから。
谷中
でも、その後もずっと映ってるし。
佐橋
それは主題歌を録音している風景としてね。相原(裕美)監督が、〈音響ハウス〉のドキュメンタリーとしていろんな方のインタビューを撮るのとは別に、スタジオでの録音風景を撮りたいと。それで主題歌を作ってくれないかって話があって、僕が作曲して大貫(妙子)さんに歌詞をお願いしたわけ。だから主題歌を録音する場面に出てるだけでね。
谷中
それでも、出演されてる方々と満遍なく交流されてるのは佐橋さんでしょ。
佐橋
それを言うなら主役は〈音響ハウス〉ですよ。あれだけの人たちに愛されているんですから。僕はあくまで水先案内人。実際、スカパラもよく使ってるよね?
谷中
ですね。ほとんどのアルバムがそうじゃないかな。とはいっても、佐橋さんの利用頻度の比じゃないけど。
佐橋
僕の場合は、〈音響ハウス〉に育ててもらったところがあるから。初めて来たのが20歳の頃。まだデビュー前で、高校の先輩だったEPOさんのレコーディングに遊びに来たのが最初。その後もここ出身のエンジニアの方と仕事をする機会が多かったというのもあるかな。打ち合わせしてると、じゃあピアノは音響の2スタのピアノで、とかね。
谷中
エンジニアがつなぐ縁はあるかも。うちもきっかけは(渡辺)省二郞さん。
佐橋
省二郞さんは〈音響ハウス〉、むっちゃ多いもんね。2スタ?
谷中
もっぱら2スタですね。2スタといえば、映画の中でソリッド・ブラスがコントロールルームに向かって吹いてますよね。あれ、スカパラではやったことがなくて、今度やってみようと思って。
佐橋
ガラスに向かって吹くせいか、ちょっとした余韻があっていいんだって言ってたよ。スタジオは基本、余計な響きがないように造られているものだけど。
谷中
たしかにそうかも。本田(雅人)さんも「その気になれる音」って。
佐橋
そうそう、言ってたよね。スカパラもホーンは全員一緒に録るんでしょ?
谷中
というか、うちの場合は録れるスタジオなら全員一緒なんですよ。
佐橋
そうか、合奏できるからね。後でダビングもできるけど、全員一緒に音を出す臨場感には敵わない。〈音響ハウス〉
はそれができる点も素晴らしい。
谷中
大切です。残していかないと。
佐橋
僕が一番気に入っているのは、2スタのピアノはじめ、置いてある楽器が素晴らしいこと。星野源ちゃんがここ使うのは、いいマリンバがあるからじゃないかって噂もあるくらい(笑)。
谷中
メンテナンスが行き届いている点もいい。映画に出てたマイクのメンテナンス担当の方、それに毎日同じ時間に出勤されているという責任者の遠藤さん。
佐橋
ホント頭が下がります。僕ら生楽器プレイヤーはマイクを立ててもらってなんぼなんで、部屋の響きとマイクの状態がすごく大切なんだよね。
谷中
あと、葉加瀬(太郎)さんも言ってたけど、僕らにとっては、通い続けることでスタジオを知ることが重要で。
佐橋
そうだね。俺は〈音響ハウス〉の2スタの、昔ドラムブースだったところにギターアンプ置いて、扉全開にして録るのが好きなんだけどね。でもこういうのって、たまたま発見するんだよ。たまたま閉め忘れて弾いちゃったら、アレ、こっちの方がヌケがいいかも、とかね。
谷中
でもたまたまは、通った回数に比例しますから。
佐橋
それはそうかもしれない。だから、どこかのスタジオが改装するとかいう噂を聞くと、ドキドキしちゃうからね。え、もしかしてあの響きが消えちゃうのって。
谷中
老舗の料理店みたいなもんですよね。店内を改装されただけで味が落ちたような気になっちゃいますから。
佐橋
暖簾があるんだね。
谷中
映画の中で、ベテランのスタッフさんが開設当時の写真を見て回想するシーンで、2スタが白塗りの超モダンなイメージだったんですけど。
佐橋
一回大きな改装したらしいよ。
谷中
そうだったんですね。あのシーンでカラーのライトをつけてたって言ってたじゃないですか。アレ、復活してくれないかなー。絶対アガると思う。
佐橋
ライト変えても音は変わらないしね。でももしかして俺たち、勝手なことばかり話してる? ダイジョーブ?(笑)

『音響ハウス Melody-Go-Round』

主題歌「Melody-Go-Round」を作り上げる外連味ないドキュメンタリーに、日本を代表するアーティストたちが語るエピソードが挿入されていく。監督:相原裕美/出演:佐橋佳幸、飯尾芳史、高橋幸宏、井上鑑、大貫妙子、HANA、葉加瀬太郎、ソリッド・ブラス、坂本龍一ほか。11月14日渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。

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やなか・あつし

1966年東京都生まれ。東京スカパラダイスオーケストラのバリトンサックス奏者。スカパラの歌モノ楽曲の作詞を担当する。12月3日、Zepp Hanedaでライブを開催予定。https://www.tokyoska.net/

さはし・よしゆき

1961年東京都生まれ。ギタリスト、音楽プロデューサー。83年、バンドUGUISSでデビュー。解散後セッションギタリストとしての地位を築く一方、〈ダージリン〉など音楽性の高い活動で注目を集める

photo/
Yasuyuki Takaki
text/
Kaz Yuzawa
edit/
Akihiro Furuya

本記事は雑誌BRUTUS927号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は927号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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