エンターテインメント

ホンマタカシ × 大森立嗣|映画とドキュメンタリーの間にあるもの。

BRUTUSCOPE

No. 926(2020.10.15発行)
恋の、答え。
ホンマタカシ(左) 大森立嗣(右)

写真家・ホンマタカシ、映画監督・大森立嗣。20年来の盟友が再会。

ホンマタカシ
お〜、久しぶりだねぇ。とはいえ、しょっちゅう大森君の映画観てるから久しぶりな感じもしないけど。
大森立嗣
俺はすごく久しぶりですよ。いつも(連載で紹介していただいて)、ありがとうございます。
ホンマ
いやいや、いじりつつ(笑)。ブルータス読者的にも僕らの関係は謎だと思われてるよね。
大森
ホンマさん映画の助監督をやって以来の仲なんですよね。
ホンマ
今思えばふざけた感じの映画だったけど、主演は今を時めく市川実日子だからね。90年代後半だったね。
大森
確か、4本から成る短編作品。
ホンマ
あの時、本当は「リトルモアMOVIES」(リトルモアとテアトル新宿がタッグを組み、1998〜99年にかけて1年間4本の映画で構成されたシリーズ)の長編を1本撮ってくれと頼まれたの。でもその時は自信がなかったのもあったし、自分がそういうことやっても仕方ないなと思って、10分の作品4本ならいいですよと言って引き受けた経緯があったんだよね。そういえば、さっき坂井真紀ちゃんに久々に会って撮影してたんだけど、一緒にアメリカのUFO博物館も行ったよね。ムラジュン(村上淳)と真紀ちゃんをわざわざ連れて。
大森
しかも真紀ちゃんとムラジュンは現地集合現地解散。俺たちは2人で車で行ったよね。また遠いんですよ、ロズウェルってところが。
ホンマ
あれ以来だから、今日は20年ぶりくらいだよね。
大森
いやいや、一度映画の舞台挨拶に来てもらった気がする。それも10年前くらいで、何の映画か全然覚えてないけど。
ホンマ
新作『星の子』(公開中)観ましたよ。お茶の映画(『日日是好日』)に続いてヒットするんじゃない⁉ 大森君がお茶の映画撮ると聞いたときは、ホントに撮れるの⁉ って思ったけどね(笑)。
大森
ははは。思いますよね、ふつう。
ホンマ
いつ暴力沙汰が始まるかと思って(笑)。まぁ、今作でもそういうことはなかったですね。芦田愛菜さん、可愛いし。大森君は原作ものもオリジナル脚本も両方やるけど、違いはある?
大森
原作がある方が楽といえば楽ですね。まぁ、大きくは変えられないけど。
ホンマ
急に暴力シーンとか、入れられないもんね。
大森
あのね、そもそも暴力シーンがあるって前提が間違ってますよ(笑)。そういうところ変わらないね、ホンマさん
ホンマ
正直、俺は劇映画がよくわからないというか。大森君に助監督やってもらった最初の映画も、ドキュメンタリーでもドラマでもない、謎映画
大森
うん。謎……だったね。正直、何撮ってるのか全然わかんなかった。朝早く集合して、ゆっくりベイブリッジを渡って、東京の風景を撮影している姿を横目に、この人は一体何考えてるんだろう、っていうのをずっと考えてた。
ホンマ
あははは(笑)。
大森
でも、なんかかっこいいなとは思ってたの。当時、日本ではまだビデオアートみたいなのがなかったけど、ホンマさんアメリカヨーロッパのそういった作品をたくさん知っていて、ああいうのがあってもいいじゃん! って。今回の『建築と時間と妹島和世』も観せてもらいましたが、まぁ、ドキュメンタリーっちゃあ、ドキュメンタリー、でしたね。やっぱり、あの時から何も変わってない感じがしました。定点観測の感じも。
ホンマ
ドキュメンタリー作品にはメッセージとかが必要だと思うんだけど、今回いろんな人に、「何も言ってませんね、ホンマさん」て、すごく言われた。ホンマさんにとって映画と写真の違いはなんですか? という質問をよくされるんだけど、俺はやっぱり、その間みたいなものが面白いんじゃないかと思っていて。
大森
俺はいわゆる普通の助監督みたいなこともやってたので、ホンマさんみたいな人に出会うと、あぁなんか舐めてていいなぁ、て(笑)。すごくいい意味で。映画の縦社会の中で生きていると表現が凝り固まっちゃうところがあって、それがホンマさんにちょっとほぐされた感じがあったんだよね。とはいえホンマさんの中にも、今作に込めたメッセージみたいなのはあるんですか?
ホンマ
写真でも定点観測みたいな部分があって、そういうのには興味がある。コマ撮りアニメってあるじゃない? あれのすごい遠いやつみたいな感じになったら、ちょっと面白いかな、と思って。俺はこういう作品は、美術館とかギャラリーで観せたらいいと思うんだよね。
大森
以前からそんなふうなことを言ってたよね。それってどういう感覚?
ホンマ
それこそアピチャッポンとかペドロ・コスタがギャラリーで作品を観せ始めたように、ああいう感じでいけたらいいなって。映画館だと一つのパッケージというか、起承転結を求められる。それはそれでいいと思うんだけど、俺としてはギャラリーとかで観て、これなんだろうなぁ? って。その後お茶飲む時も、アレは何だったんだろう、って引っ張ってくれたらいいなと思う。
©2020 Osaka University of Arts. All Rights Reserved.

『建築と時間と妹島和世』

監督・撮影:ホンマタカシ/建築家・妹島和世が手がけた大阪芸術大学アートサイエンス学科の新校舎。「公園のような建物」という思いを込め、その構成から完成までの3年6ヵ月を追ったドキュメンタリー。数々の建築物を撮影してきた写真家ホンマタカシが、一人の建築家が一つの建築に向き合う姿を鮮明に捉える。ユーロスペースで公開中。

エンターテインメントカテゴリの記事をもっと読む

ホンマタカシ

1962年生まれ。写真家2011年より個展『ニュー・ドキュメンタリー』を開催。19年に『Symphony その森の子供 mushrooms from the forest』を刊行。

おおもり・たつし

1970年生まれ。映画監督。様々な作品で助監督を務め、『ゲルマニウムの夜』(2005年)で初監督。20年は『MOTHER マザー』『星の子』と監督作品が目白押し。

photo/
Kohei Omachi
text/
Chisa Nishinoiri

本記事は雑誌BRUTUS926号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は926号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.926
恋の、答え。(2020.10.15発行)

関連記事