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【11月6日公開】渡辺俊美 × 渡辺登生|渡辺俊美のお弁当エッセイが映画化。久々に親子で語ってもらいました。|『461個のおべんとう』

BRUTUSCOPE

No. 926(2020.10.15発行)
恋の、答え。
渡辺登生(左) 渡辺俊美(右)

「461個のお弁当」を作った父、食べた息子の現在。

高校に通う息子へ、3年間お弁当を作り続けた父。料理写真やレシピと共に、親子の気持ちや機微も綴った渡辺俊美著『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』(2014年)の映画版、『461個のおべんとう』が完成した。物語は高校を卒業したところまでが描かれていたが、その後の親子はどうなったのか。父・俊美さんと、現在はすっかり音楽家として活動する息子・登生さんに振り返ってもらった。

渡辺俊美
高校卒業後、大学へ入ったんだけど音楽サークルの新入生歓迎会でハシャギすぎて転び、鎖骨を骨折したんだよね。正直「こりゃやめるな」と思ったんだけど。
渡辺登生
1年生の時は真面目に通ってたから、単位が取れて。ただ、高校時代から音楽を作り、動画サイトにアップしていたんだけど、大学に入った頃には〈StudioLama〉というレーベルを立ち上げたんだ。北海道からカナダまで、ラッパーなど、ミュージシャンの仲間が増えていって。
俊美
南北じゃなく、経度の違いね(笑)。
登生
メールで音源を交換し、曲に仕上げて、アップしてた。ライブもやっていたし、学業との両立が難しくなって、3年生でやめたんだ。
俊美
高校時代は自分で奨学金の申請をしたり、目標を立てたら、自分で選択して進んでいて。大学をやめる時も、やることは決まっていると思ったから驚かなかった。
登生
退学届を出す時ってさ、重い雰囲気を想像するでしょ? でも、受け付けてくれた職員さんからいきなり「ソウルセットのライブ行きましたよ、最高でした! それで何の用ですか?」とか言われ。
俊美
そりゃコケるな(笑)。
登生
「新作楽しみにしてます、お疲れ様でした!」とか送り出されたんだよね。
俊美
その時は「パンクスとラッパーは実家に住んじゃダメ!」という僕の教えを守り、登生は友達と暮らしていたから、詳しく知らなかった。
登生
大学ではラップグループのメンバーと出会えたし、行っておいてよかった。活動に集中するために退学して、売れたわけではないけど、間違ってなかったなと思う。今はライブもできないし、全財産500円しかないから、良いか悪いかわからないけど……。
俊美
お金は貸してあげるから(笑)。
登生
ありがとう。もちろん親父には感謝しています。昨年、京都精華大学の生徒さんが主催するイベントに呼ばれて出演した時、特任准教授を務めるBoseくんが「登生が出るの?」と気づいてくれ、初めて僕のラップを聴いてくれた。長文で感想をいただいて、僕も新曲ができたら送ったり、やりとりしているうちに「SUMMIT OF DIVISIONS」のリリック(『ヒプノシスマイク−Division Rap Battle−Official Guide Book』初回限定版に収録されたCD)に参加することになった。それは親父がつなげてくれた縁だと思う。それに、自分の人生が映画になることなんかないんだから(笑)。本当にビックリするよね。
俊美
イノッチ(井ノ原快彦)が、自分のことを演じるなんて驚くよな。
登生
僕なんて道枝(駿佑)くんだよ。多分、身長なんか30㎝くらい違うんだから。
俊美
最初に監督やスタッフの方と打ち合わせした時「(脚色してもいいから)劇映画にしてください」とは言った。ただの幸せな親子の話では、つまらなくなると思って。
登生
実際の僕らを見て「仲が良すぎて映画にならない」なんて言われちゃって、なんかやらなくちゃいけないと思い、次の打ち合わせの時は、親子でディープキスをしながら登場して(笑)。3年間お弁当を作ってくれて、その話が本や映画になるというのは、本当に立派なことだと思う。僕は食べただけなんだけど。
俊美
いい人生だな(笑)。
登生
改めてお弁当の写真を見たんだけど、本当にどれもおいしかった。今は僕自身も自炊しているから参考になる。
俊美
コツは「予算300円」と「料理時間40分」などルールを決めること。達成したら、ビール飲んでいいの(笑)。
登生
マジで⁉
俊美
お前が起きてくる前に飲むんだよ。今、長女のお弁当を作っているんだけど、気に入らないと残すし、気を使っちゃって大変。そう考えると、男の子のお弁当って味の好みも近いし、作っていて楽しかった。
登生
一緒にライブをする時に作ってきてよ!
俊美
次はNew Acoustic Camp 2020(無事に終了)に、親子で出る時か。僕ら世代のミュージシャンは、子供も音楽活動している人が多いから、親子共演ステージを作ればいいかもしれないね。
登生
石田純一と小石田純一って感じの。
俊美
もういいから。リハーサル行くぞ!

『461個のおべんとう』

2014年に発表された渡辺俊美の原作を兼重淳監督、井ノ原快彦、道枝駿佑ほか出演で映画化。11月6日公開。また、原作の文庫版『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』も現在発売中。

©2020「461個のおべんとう」製作委員会
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わたなべ・としみ

TOKYO No.1 SOUL SETのギター、ボーカル。「黄昏」などの名曲を再レコーディング中。また、11月28日渋谷クラブクアトロでライブも。

「Now Wave 2」
渡辺俊美&THE ZOOT16の新作。7人編成のバンド形式となり、高橋飛夢(B)作詞作曲の「幻想現実」、ケンネル青木(Steelpan)による「Star Mine」など全14曲。11月3日には、下北沢CLUB Queでライブを予定。

わたなべ・とうい

ぎぎぎのでにろう名義で活動。アルバム『JUNKPULSE』が発売中。詳しくは主宰する〈StudioLama〉のHP、または公式Twitterへ。

photo/
Satoko Imazu
text/
Katsumi Watanabe

本記事は雑誌BRUTUS926号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は926号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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