アート

Aurora (1621)|グエルチーノ

チンキビジュツ〜世にもおかしなアートの世界〜

No. 925(2020.10.01発行)
いつでも! おいしい酒場。

 バロック期に活躍したイタリアの画家、ジョヴァンニ・フランチェスコ・バルビエーリ(1591~1666)。幼少期のけががもとで斜視になった彼は、生涯“やぶにらみ”という意味の「グエルチーノ」という名で呼ばれました。今ならイジメ、ダメ、ゼッタイってな話ですが。それはさておき、卓越したデッサン力で高く評価される画家で、特に傑作として名高いのがこの一枚(図版は絵の一部)。大富豪ルドヴィージ家の別荘に描かれた天井画です。曙の女神アウロラが馬車を操り画面の左から右へと駆け抜け、黒雲を追い払っている場面。まさにこれから「空はあぁおく~澄みわたぁり~海をめぇざしてある~くぅ」と、怖いものなんてないセカオワばりの世界が広がる寸前。急角度に描かれた建物の効果もあって、見上げると、ちょうど天井が開いて空を覗いているように見えるという仕掛けになっているんですね。「空を見上げて。明けない夜はないゾ」。いつの世も、そんなふうに思う人々の思いは同じだと、妙に共感できる作品です。

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文/
中村志保

本記事は雑誌BRUTUS925号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は925号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.925
いつでも! おいしい酒場。(2020.10.01発行)

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