エンターテインメント

17歳の音楽家・諭吉佳作/menのクリエイションに注目。

BRUTUSCOPE

No. 925(2020.10.01発行)
いつでも! おいしい酒場。
諭吉佳作/men

その才能は、さりげなくて、強烈。

 その名前からして一筋縄ではいかない音楽家をご存じだろうか。2018年、10代ミュージシャンの登龍門ともいえる『未確認フェスティバル』に出場し、強烈な楽曲センスと艶やかな歌声で審査員特別賞を得た彼女。19年にはでんぱ組.incへの楽曲提供や、崎山蒼志とコラボ曲の発表など、弱冠17歳にしてシンガーソングライター、トラックメーカーとして期待が止まらない新鋭なのだ。

 彼女の強烈な個性を形作る要素の一つが、独特な詞の言葉。一つ一つは平易な単語ながら、組み合わせによって受け取り手に解釈の余白を与える大人びていて詩的な世界観が印象的だ。詞を書く過程について、彼女は次のように話す。

「既にある言葉を好きに使わせてもらっているだけで、生み出すという感覚はありません。自分の中に好きな言葉の使い方や成り立たせ方があるので、それを達成することを主な目標としています。そのためにテーマを用意する時もあれば、発音やリズム、並びの面白さだけで作る時もあって、何かを伝えるという目的はないんです。音として聴いてもらえても、内容を想像してもらえても、好きにしてもらえるのが嬉しいです」

 そして、音作りも独創的。的確にビートを刻むリズムトラックの上に変則的なメロディが乗り、時にはグラスにコインを落とすような環境音まで盛り込む。Corneliusとの出会いが音楽の道を拓いたとする一方で、幼い頃に観ていたテレビアニメ『トムとジェリー』からも意外な影響を受けた。

「キャラクターの動作が生み出す音が、強く記憶に残っています。例えば、トムがジェリーを"マウス"代わりにしてコンピューターを操作するシーンがあるのですが、ジェリーをマウスパッドにこすりつける「ざー」という音を、ふとした時に思い出します。憧れの音の一つです」

 実はソロCDとしてはまだ一枚も発売していない彼女。規格外の活躍に、一層注目したい。

彼女を知るなら、まずはこの4作を押さえておこう。

『未確認フェスティバル2018』のコンピレーション盤には、ソロ楽曲「非常口」を収録。
2でんぱ組.incの19枚目シングルのカップリング曲「形而上学的、魔法」では作詞作曲を担当。
崎山蒼志のセカンドアルバム『並む踊り』にはコラボ楽曲「むげん・(with 諭吉佳作/men)」を収録。
10代の2人組女性ユニット・963の最新アルバム『tick tock』では「lumen」にて作詞を担当。
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ゆきちかさくめん

2003年静岡県生まれ。18年に、インディーズ音楽配信サイト「Eggs」で年間アーティストランキング2位を獲得。楽曲提供も行うほか近年は執筆活動も並行して行うなど幅広く活躍。

text/
Emi Fukushima

本記事は雑誌BRUTUS925号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は925号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.925
いつでも! おいしい酒場。(2020.10.01発行)

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