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【10月9日公開】演じ続ける男、永瀬正敏が“信じる”もの。|『星の子』

BRUTUSCOPE

No. 925(2020.10.01発行)
いつでも! おいしい酒場。
永瀬正敏

「僕が信じるものは、映画ですね。一度も裏切られたことがない」

 俳優・永瀬正敏。信じるものは? という問いにためらいなく言い切ると、続けた。

「デビューして4、5年、全然映画に呼んでもらえない時期ですら映画をずっと信じていました。撮影の現場はホントに大変です。みんな泥まみれ汗まみれで、毎回なんでこんなこと続けているんだろうと思うけれど、終わると途端に寂しくて。すぐまたその場に立ちたくなって、次の現場に行きたい、行きたいという思いが募っていく。観る側としても、いろんな映画と出会い、その時々の気分、色温度みたいなものを中和してもらい、何度も何度も救われちゃっているので、信じてるんですよね」

 彼が出演する映画『星の子』は、まさに“信じる”ことを描いた作品だ。病弱に生まれた主人公ちひろ(芦田愛菜)を治した“あやしい宗教”を、永瀬演じる父親と、母親(原田知世)は深く信じている。

「信じることの“純粋さ”、“愛情”、ある意味“狂気”を家族というかけがえのないものの中でどう表現していくのか? 今作では、大森立嗣監督の真っ向からのチャレンジと手腕にシビれましたね」

 俳優歴37年。国内外100本以上の作品に出演し、映画の現場に身を置き続ける役者を突き動かすものはなんなのだろう。

「映画を作るという不透明なものをここまで信じられるのは、デビュー作で出会った相米慎二監督の存在がデカかったですね。その時信じたものがデカかったというか、僕にとっては、相米監督の現場がずっと続いているような感覚なんです。映画や芝居は数式ではないし、答えがない。それでもみんなが信じて一点に進んでいく姿が、当時16歳の少年には素敵だったのかな」

 実は役者としての最終目標がある、と話してくれた。

「デビュー作で、結局一度も相米さんからOKをもらってないんですよ。“まあ、そんなもんだろう”がOK代わりというか。そのうち△と×が描かれたプラカードを作られて、それが挙げられるだけ。だから、いつかまた相米さんとご一緒して、思わず監督の口からOK! が出る役者になるのが目標だったんです。でも、相米のオヤジが先に天国へ行ってしまったので、もう永遠に“まあ、そんなもんだろう”の役者になっちゃった。その目標があるので、永遠に役者を追いかけているんでしょうね」

©2020「星の子」製作委員会

『星の子』

監督・脚本:大森立嗣/原作:今村夏子/出演:芦田愛菜、永瀬正敏、原田知世、岡田将生ほか/病弱に生まれながら両親の愛情たっぷりに育ったちひろ。15歳に成長した少女の信じる力を描いた感動作。10月9日、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。

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ながせ・まさとし

1966年宮崎県生まれ。83年、相米慎二監督の映画『ションベン・ライダー』でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督『ミステリー・トレイン』、山田洋次監督『息子』はじめ国内外100本以上の作品に出演し数々の賞を受賞。

photo/
Ayumi Yamamoto
styling/
Yasuhiro Watanabe
hair&make/
Katsuhiko Yuhmi (THYMON Inc.)
text/
Chisa Nishinoiri

本記事は雑誌BRUTUS925号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は925号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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