ファッション

悩んだ末にできあがったのは、記録写真としてのファッション。

From Editors

No. 924(2020.09.15発行)
必要な服だけを。
撮影終了後に互いを撮影し合う、長島有里枝さんと、モデルになってもらった田附勝さん。飯能にある入間川の土手で。写真家同士の会話につい聞き耳を立ててしまいました。

衣食住の「衣」とは必需品を指すと教わったことがあります。腑に落ちなかったのは、考えてもなかなか簡単に分類できるものではないと思ったから。「モードな服だって、必需品だ」という人はいるし、その境界線は人によって様々。嗜好品が必需品で何が悪いんだと。「不要不急」という言葉に向き合う中で、同時に今回の特集「必要な服だけを」を作る準備をしていました。果たして自分にとって洋服とは? 読者はいまどんな情報を求めている? これから作る本がファッションを盛り上げられるのか? いろいろと自問自答していたのです。

ある日、ニュースを見ていると、ドイツ政府が発表した総額7500億ユーロにも及ぶコロナ禍救済策について触れていました。モニカ・グリュッタース文化相は「アーティストはいま、生命維持に必要不可欠な存在」という声明を発表し、芸術関連の個人や組織、フリーランス、メディアなどを対象に手厚い保護を行なったという。それも日本では考えられない規模で。それを聞いたときに、ページの方向性を決めたのです。日本では“不要不急”とされそうな活動を生業として人たちをモデルにファッションストーリーを撮影したいと思いました。そして、写真家の長島有里枝さんに連絡をし、特集のメインとなるファッションストーリーを撮影して欲しいと依頼。「自分たちがいまできる表現(撮影)ってなんだろう」というZOOM会議から始めたのです。スタイリストは石井大さん。そして、ステイホームで行動範囲が狭まる中、ローカルな人、場所で撮影をすることを条件にしました。アーティストやダンサー、ミュージシャンにフォトグラファーなど13組のモデルたちは全員、スタッフ誰かと面識がある人たちです。何よりも不安を隠さないことを条件に、撮影を進めました。同時にインタビューで彼らの言葉もページにまとめています。関わった全ての人たちの、剥き出しの気持ちが、ここに記録されているのです。

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本誌担当編集/
鮎川隆史

本記事は雑誌BRUTUS924号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は924号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.924
必要な服だけを。(2020.09.15発行)

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