ファッション

『WMV VISVIM TOKYO』中村ヒロキの好きなもの、私物までをも集約。

店でこそ味わえる、最高の買い物体験。

No. 924(2020.09.15発行)
必要な服だけを。
内と外の境目を感じさせないよう、床のコンクリートは洗い出しで仕上げられた開放感のある造り。

デザイナー宅も手がけた作庭師による坪庭。

 目黒川沿いにあるこの店舗は、国内のどの店舗よりもデザイナー・中村ヒロキの自宅に似ている。まず目を引くのが、室内と外の境界線をなくすように造られた坪庭の眺め。手がけたのはフランス名誉市民で造園界のカリスマとされる安諸定男。どうやら中村が所有する、古い日本の邸宅の庭を手がけていた人物なのだという。この店舗を構想するにあたり本人に会いに行き、意気投合。好きなように造ってもらった。時間の経過とともに苔まで味となるよう計算されているうえ、庭へとつながる店舗の床までも安諸がデザインしている。ちなみに経年変化という点では、店舗の瓦や配管に銅が使われており、時が経つにつれて青錆が強くなっていくようにもなっている。ビズビムのウェアにも通ずる、変化や劣化を美しいとする哲学が店舗設計にも存分に落とし込まれているのだ。

さらに、京都から持ち込んだ瓦を床に埋め込むという遊び心も、安諸の発想。

特注の大きな襖に宿る日本の伝統技術を見よ。

 ビズビムの店作りには一つとして抜かりがない。クローゼットのように設けられた襖には、穴の開いた型に鹿毛の刷毛で一つ一つ叩いて色を入れていく「型摺り染め」が施されている。ちなみにこの染色法はブランドの洋服にもよく用いられている技でもある。和紙にもこだわり、“紙の王様”と称される越前和紙の一種、雁皮紙を使用。日本の伝統品と技術の融合にデザイナーの唯一無二のセンスが光る。

クローゼットの床や木枠などには、道具の痕跡を残し、それを味わいとする伝統技法“なぐり”を活用。

中村ヒロキの私物を惜しみなくレイアウト。

 洋服や小物が品良く置かれている大テーブルは、なんとアメリカの家具デザイナーで建築家ジョージ・ナカシマの1950年代の作品で、もともと中村が自宅で使っていたもの。めったにお目にかかれるものではない。ほかにも安土桃山時代の壺に、江戸時代の自在鉤、ハラコで仕立てられたピエール・ジャンヌレのアームチェアなどすごい私物コレクションが平然と置かれている……。巨匠たちの名作や、日本の骨董品を一つの空間に同居させる中村の美意識を、肌で感じてほしい。

稀少なハラコ素材のジャンヌレチェア。
安土桃山時代の壺。
店内を照らす特大のバブルランプを支える江戸時代の自在鉤も中村の私物。
ジョージ・ナカシマのテーブル。目前の大きな窓から見える目黒川の木々の、四季折々の風情までも楽しめる
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WMV VISVIM TOKYO

ビズビムのレディースラインが中心の旗艦店。雑誌『サブシークエンス』第3号発売イベントを9月18日から開催。●東京都目黒区青葉台1−22−1☎03・6303・3717。11時~20時。不定休。

photo/
Keisuke Fukamizu
text/
Naoto Matsumura

本記事は雑誌BRUTUS924号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は924号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.924
必要な服だけを。(2020.09.15発行)

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