世の中には、ブランドが展開する無数のインスタグラムアカウントがある。やり方は十人十色だが、数ある中で際立った特色を出すのは難しい。話題なのが、〈グラフペーパー〉のアカウントだ。なかでも“南貴之Q&A”は、文字通りディレクターの南さんがフォロワーの疑問に答える質問箱で、これが自粛期間中に化けた。詳細を本人に聞いてみた。
「みんな家から出られないし、僕らも店舗で商売ができないタイミングだったので、これを機にフォロワーとコミュニケーションを取ろうと考えました。“何か質問ありますか?”というざっくりしたQ&Aを開設したら、僕らが予想していない質問が次々と書き込まれて、反響がすごかったんですよ」
質問が並ぶQ&Aは、フィルターのかかっていないリアルな消費者目線である。これこそがSNSの醍醐味だ。
「僕らが思っていた以上にブランドが浸透していないことや、地方の取扱店が知られていないことがわかりました。それから、試着ができないタイミングということもありサイズ感の質問とか。スタイリングの質問に対しては、実際にスタッフに着せて写真をポストしました。なかには逆にこういうのが欲しいという提案もあり、デザインの参考にさせてもらったり。ショップスタッフへの厳しいコメントもありましたね(笑)。やはりSNSは、ダイレクトにお客さんの声が聞けるし、タイムラグがないので無駄がありません。思わぬ形で、新しい“オンライン接客”が生まれ、実際にECの売り上げも急激に伸びました」
常に進化を続けるSNSツールは、使い方次第で無限の可能性を秘めている。顧客との交流の場として、Q&Aは今後も活用していきたいと南さんは語った。
- edit&text/
- Shigeo Kanno
本記事は雑誌BRUTUS924号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は924号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。