エンターテインメント

ほんものの ちゅうくらいの つよさを みせてやる!(『MOTHER2』より)

『MOTHER』の特別なことば。

No. 924(2020.09.15発行)
必要な服だけを。
© SHIGESATO ITOI / Nintendo

ありふれたダンジョンがこんなに愉快になる。

 糸井重里の作ったRPG『MOTHER』シリーズは「ことば」が特別だといわれます。どう特別かを実例を挙げて解説していく連載です。初回はRPGの極めてありふれた状況が、ことばだけで愉快になるという話。

 あるダンジョンに主人公たちが入る。するとその奥にモグラの中ボスが待ち構えている。ほら、超ありふれてるでしょ? モグラの中ボスは言う。この穴には5匹のモグラがいると。そして「おれは そのうちで 3ばんめに つよい」と。なるほどそうかと身構えて戦闘に入り、その3番目に強いモグラを退けて進むと、またモグラが現れる。話しかけるとそのモグラは堂々とこのように言い放つ。

「おれが ほんとうに 3ばんめに つよい このあなのぬしだ」

 え。どゆこと? お前がナンバー3のモグラなの?

 モヤモヤしたままそのモグラを倒して進むとまたモグラがいる。もしかしたら、と思うとそいつはこう言うのだ。

「おれは 2ばんめにつよい あなのぬしより よわいが 4ばんめのやつより つよい」と。なんでみんな自分こそが3番だと言い張るんだよ。

 こうなるともう次のモグラに会いたくてたまらない。普通のRPGはダンジョンの突破やミッションのクリアを目的に進む。けれども『MOTHER』シリーズはこんなふうに「ことば」で全体をドライブする。

 そして次に会うモグラも、自分が正真正銘のナンバー3だと言い張った揚げ句、勝負の前にかっこよくこう決めるのである。

「ほんものの ちゅうくらいの つよさを みせてやる!」

 そういう面白いゲームなんです、『MOTHER』は。

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文/
永田泰大(ほぼ日)

本記事は雑誌BRUTUS924号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は924号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.924
必要な服だけを。(2020.09.15発行)

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