アート

【9月22日〜開催】作家・地主麻衣子が「今できること」から見出す新たな表現とは?|『新・今日の作家展2020 再生の空間』

BRUTUSCOPE

No. 924(2020.09.15発行)
必要な服だけを。

日常に浸透する不確かな感情や事象を再考。

「新しい種類の文学」をテーマに映像、インスタレーション、パフォーマンスなどを組み合わせて表現の可能性を模索し続けてきた作家・地主麻衣子。9月22日から〈横浜市民ギャラリー〉で開催される『新・今日の作家展2020 再生の空間』で4つの新作映像インスタレーションを展示する。地主は作品について、次のように話す。

「今回展示する作品はソーシャルディスタンスが求められるコロナ禍以前から、すでに生活の中に浸透していた”遠隔でのコミュニケーション”や”実際に触れられない相手や目の前にいない他者を求める感情””画面越しに見るという行為”などの事柄について考察しています。その中の一つ『Lip Wrap / Air Hug / Energy Exchange』は、昨年”身体的な接触をすることが難しい状況で、それでも親密さを求める気持ち”について書いた自作の詩をもとにしています。この詩は、どう作品化するか迷ううちに1年ほど置いてしまっていましたが、新型コロナウイルスの流行で詩に書かれた状況が急に現実味を持ち始めたんです」

 こうした日常の変化は、地主が目指してきた制作の方向性をガラリと変えた。

「自宅に籠もる日々の中で、最低限のものだけで、なるべく簡単な方法で制作をしたらよいのではないか、と思いついたんです。使用したのは詩と、自分の声と、ノートパソコンだけ。身軽さや柔軟さを見直し、”今できることをする”という制作の原点に戻ったような感覚でした。完璧なものを目指そうとは思っていなかったので、A4用紙に”trashy(くだらない)”と書き、目標のように壁に貼っていました。どうでもいいようなもの、完成していないもの、生っぽい感触のものにしたかったんです」

 日常の延長線上から生まれた本作は、受け入れるままにしていた些細で曖昧な事柄と向き合う絶好の機会となるはずだ。

『新・今日の作家展2020 再生の空間』

現代美術を紹介する年次展覧会。今年は地主麻衣子と山口啓介の作品を展示。9月22日から10月11日、横浜市民ギャラリー展示室1、B1(神奈川県横浜市西区宮崎町26−1☎045・315・2828)で開催。10時〜18時(入館〜17時30分)。無休。

アートカテゴリの記事をもっと読む

じぬし・まいこ

1984年生まれ。近年の個展に『欲望の音』(2018年、HAGIWARA PROJECTS/東京)、『新しい愛の体験』(16年、HAGIWARA PROJECTS/東京)など。

text/
Konomi Sasaki

本記事は雑誌BRUTUS924号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は924号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.924
必要な服だけを。(2020.09.15発行)

関連記事