佐久間です。今回のお相手は、漫画家の田島列島さん。『子供はわかってあげない』では、高校生のなにげない青春にトランスジェンダーや新興宗教などの複雑なテーマが絡んでいて。世の中の生きにくさを表現しながらも、それを巧みな会話劇で軽妙に描いているのが現代的で、素晴らしかったです。そこで会話劇繋がりで、最近グッときた映画『マリッジ・ストーリー』を。ある夫婦の離婚に至るまでの物語で、妻と夫それぞれの痛みや怒りの感情のうねり、関わるごとにこじれる関係が会話主軸で丹念に描かれています。起きているのは“離婚”というシンプルな一局面でしかないのに、人生に対する価値観の違いや、「妻は夫を支えるべき」とされる世の中の定説がさらりと表現されているところが、田島さんの作品にも通じるなと。後半の脚本11ページにもわたる長回しの夫婦喧嘩シーンは白眉です。ぜひ!
『マリッジ・ストーリー』
離婚プロセスに戸惑い、子の親としてのこれからに苦悩する夫婦を描く。第92回アカデミー作品賞にもノミネート。監督:ノア・バームバック/出演:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライヴァーほか/Netflixにて独占配信中。
- 編集・文/
- 福島絵美
本記事は雑誌BRUTUS923号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は923号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。