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【〜9月24日まで上映中】全14作が揃う、気鋭の映画スタジオ〈A24〉の特集上映が開催中。|『A24セレクション』

BRUTUSCOPE

No. 923(2020.09.01発行)
新・ニッポン観光

90年代の若者映画的感性をアップデート。

 2012年、一つの映画スタジオがNYで産声を上げた。その名は〈A24〉。謎めいた社名は、イタリアの高速道路〈アウストラーダA24〉に由来するという。ハーモニー・コリンやソフィア・コッポラなど若き巨匠らの作品を手がけていると同時に、同社が当初から力を入れていたのが、才気溢れる新人監督のフックアップだ。16年にはそれが実を結び、まだ長編を1作しか撮ってなかったバリー・ジェンキンス監督とタッグを組んだ『ムーンライト』で、米アカデミー賞作品賞ほかを受賞。これによって不動の地位を確立した同社は、世界の映画好きたちに「〈A24〉の作品はとりあえず観ておこう」という気分を植え付けることとなった。

〈A24〉作の特色を一言で表現するのは難しいが、多くに共通しているのは、「90年代的なミニシアター系若者映画のアップデート」とでも言うべき感性だ。実際、『ムーンライト』は切ない同性愛のゆくえを、ウォン・カーウァイ監督へのオマージュ満載で描いているし、『アンダー・ザ・シルバーレイク』はポストモダン文学の重鎮トマス・ピンチョンさながらのサブカル陰謀論が物語の鍵を握る。あるいは、『20センチュリー・ウーマン』でフェミニズム的なテーマと向き合ったのは、90年代カルチャーのレジェンド、マイク・ミルズだ。こうした感性が、折からの90年代リバイバルの流れに見事フィットしたことも、A24が注目されている要因かも。

 そんなA24作品を集めた特集上映が開催中だ。しかも、場所は東京における90年代カルチャーを牽引したパルコ運営のミニシアター、渋谷の〈シネクイント〉。これほどA24作品を観るのにうってつけの場所もほかにないだろう。右で触れた3作のほかにも、『エイス・グレード世界でいちばんクールな私へ』など14の注目作が観られる。この機会に、自分なりの“〈A24〉らしさ”を探してみるのも、楽しいに違いない。

©2016 A24 Distribution, LLC

『ムーンライト』

監督:バリー・ジェンキンス/主演:トレヴァンテ・ローズ/ゲットーに暮らす一人の黒人男性の苦難に満ちた人生を、少年期、青年期、そして大人になってからの3部構成で描く。

©2017 Under the LL Sea, LLC

『アンダー・ザ・シルバーレイク』

監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル/出演:アンドリュー・ガーフィールド/舞台はLA。無職の青年が、謎の女性に恋したことから、ハリウッドに巣食う陰謀に巻き込まれる。

©2016 MODERN PEOPLE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『20センチュリー・ウーマン』

監督:マイク・ミルズ/主演:アネット・ベニング/70年代のアメリカを舞台に、子育てに悩み、世代の異なる2人の女性に助けを求めたシングルマザーと、その息子の関係を綴る。

シネクイント復活2周年記念特集上映 『A24セレクション』

『HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツ』『スイス・アーミー・マン』『ロブスター』などもラインナップされている。〜9月24日、シネクイント(東京都渋谷区宇田川町20−11 渋谷三葉ビル☎03・3477・5905)。

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Keisuke Kagiwada

本記事は雑誌BRUTUS923号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は923号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.923
新・ニッポン観光(2020.09.01発行)

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