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【9月17日~23日上演】ノゾエ征爾 × 高田聖子 やっぱり劇場で上演したい! 舞台人2人のいまの本音。|『ボクの穴、彼の穴。』

BRUTUSCOPE

No. 923(2020.09.01発行)
新・ニッポン観光
ノゾエ征爾(左) 高田聖子(右)

ソーシャルディスタンスを求められるなかでの演劇表現はどうなる?

舞台『ボクの穴、彼の穴。』が4年ぶりの再演。翻案・脚本・演出のノゾエ征爾さんと女優・高田聖子さんが、劇場で芝居を打つ魅力について語ってくれました。

高田聖子
『ボクの穴〜』の初演を観たとき、「戦争です!」というセリフで唐突に始まるところにものすごく驚きました。二人芝居なのだけど、一人一人のつぶやきのようでもあり、面白かった。
ノゾエ征爾
兵士たちはそれぞれ穴の中で、自分の置かれた状況についてあれこれ考えを巡らせますが、妄想を膨らませて気持ちがアップダウンするところは、コロナ禍の僕がまさにそんな状態で(笑)。
高田
私もです(笑)。自分だけがとり残されたように感じる日もあったり。
ノゾエ
それ、僕も実感しました。毎日子供と公園に行っているのですが、パパたちもたくさん来ていたんです。みんな一緒なんだなと励まされていたら、6月になったとたん、パタリといなくなってしまい、軽く落ち込みました。
高田
わあ、そうでしたか。
ノゾエ
僕は予定していた舞台が4本、コロナウイルスで中止になってしまったんです。じっとしていられなくて、短い映像作品を作ったり、劇団員のことが気になって一人一人に会いに行き、奨励金を渡しながら、映像に撮って配信したりしていました。聖子さんは〈月影〉シリーズで主宰をなさっていますが、この期間、やりたいことは何か浮かびました?
高田
いいえ。プロデューサーの岩間多佳子さんと「若い人たちはいろいろやっているけれど、私たちはできないねえ」なんて話してました。
ノゾエ
とにかく何かしようとすぐ配信演劇を作り始めた人と、無理せず、芝居ができるようになるまで待とうという人と両極に分かれましたよね。
高田
私は、山崎一さんに誘ってもらって、7月に下北沢・駅前劇場で無観客生配信のお芝居(別役実『門』)をやらせてもらったんです。初めてのZoomで。
ノゾエ
ワクワクしそうですね!
高田
しました! 学生時代、自主映画を手伝っていたときのことを思い出しました。上演は1回のみ。打ち上げもできないし、片づけて家に帰ったら、まだ、ご飯を作って食べられるような時間だった(笑)。夢から覚めたようでした。
ノゾエ
クサい言い方になりますけど、結局、ものを作ることによって自分は生かされているんだなと実感しましたね。公演がとんで、もぬけの殻になっていたけれど、映像を作っているときは無心になれた。そうしているうちに『ボクの穴〜』の再演も決まり……。先日、自粛後に初めて劇場で舞台を観たんです。
高田
どうでした? 
ノゾエ
1席おきに座るって、寂しいかなと思ったけど、足も伸ばせるし、観やすかったです。
高田
そうなんだ。若い頃は、桟敷席にギュウギュウに詰めて、隣の人とくっつきながら観るというのも楽しかったけれど、これから変わっていくのかな。
ノゾエ
小さな劇場の、舞台と客席が心通わせられる距離感っていいですよね。やる方は一番緊張もするけれど。
高田
大きな劇場の、客席からビッグウェーブが来るような、渦潮の目に呑み込まれる感覚も捨てがたいですね。舞台と客席のどちらが操作しているのかわからない、生き物のようにうごめく空気。私は30年以上舞台に立ってますけど、いまだにお客さんの反応は読めないです。手応えないなあと思っていたら、スタンディングオベーションだったり、大ウケだったのに、カーテンコールであれ? と思うことも。
ノゾエ
わかります。本当に読めないですよね。これからは配信も増えるでしょうし、作品は淘汰されていくでしょうね。劇場に行ってまで観たいと思うくらい、ちゃんと作らなきゃ……と思います。
高田
7月に数ヵ月ぶりに駅前劇場で芝居をしたとき、舞台袖とか、劇場の暗さが心地いいなと思ったんです (笑)。
ノゾエ
ああ、わかる気がします!
高田
「ここだけの内緒ね?」というよな、演者と観客が秘密を共有しているような感覚が舞台にはあるじゃないですか。それが楽しかった。この数ヵ月間、健康的に過ごさねばと頑張っていたけど、もともと全然、健やかじゃなかった。もっと怪しい場所にいたはずなのに。
ノゾエ
たしかに。僕も家でストレッチとか始めてました(笑)。健全に過ごすにはまだ早いかもしれないですね。

PARCO Production 『ボクの穴、彼の穴。』

原作:デビッド・カリ/翻訳:松尾スズキ(千倉書房より)/翻案・脚本・演出:ノゾエ征爾/出演:宮沢氷魚、大鶴佐助/戦場の塹壕に取り残され、見えない敵に向き合う孤独な兵士。セルジュ・ブロックの絵本をノゾエさんが大胆かつリアルな物語に仕上げた。9月17日~23日、東京芸術劇場プレイハウスで上演。●問合せ/サンライズプロモーション東京☎0570・00・3337

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のぞえ・せいじ

1975年岡山県生まれ。脚本家演出家、俳優。劇団〈はえぎわ〉主宰。99年〈はえぎわ〉を始動。全作品の作・演出を手がける。2012年『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。昨年、月影番外地『あれよとサニーは死んだのさ』の脚本を担当した。

たかだ・しょうこ

1967年奈良県生まれ。女優。87年『阿修羅城の瞳』から劇団☆新感線に参加。95年にプロデュースユニット〈月影十番勝負〉を立ち上げ、近年は〈月影番外地〉として上演。9月13日よりケムリ研究室no.1『ベイジルタウンの女神』(世田谷パブリックシアターほか)に出演。

photo/
Aya Kawachi
text/
Tomoko Kurose

本記事は雑誌BRUTUS923号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は923号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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