慰安婦少女像や、昭和天皇の肖像を焼く場面が問題となった映像作品が出展された、『あいちトリエンナーレ2019』内の展示『表現の不自由展・その後』。激しい物議を醸し、開催後わずか3日でいったん中止に。記憶にも新しい“事件”ではないでしょうか。“自由な表現”に対する答えは、専門家でもそれぞれ違って、簡単に出せるものではないようです。アートとは何ぞや。永遠の問いですね。さて上の作品は、ブロンズ製の約21×33×23㎝という小ぶりな彫刻です。題名は「沈黙の彫刻」と訳せばいいでしょうか。ハンス・アルプ(1886〜1966、英語読みではジャン・アルプ)は、第一次世界大戦中に起こった芸術運動「ダダイズム」に属するアーティストとして知られています。有機的かつ抽象的な絵画や彫刻を多く制作しましたが、その何物にもとらわれない精神を具象化するという意味において、自分の作品を“具象芸術”と呼びました。少しひねくれていますね。さあ、赤裸々か、謎めいた表現か。どちらが響くのでしょう。
- 文/
- 中村志保
本記事は雑誌BRUTUS922号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は922号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。