エンターテインメント

人生そのままを演じる。 そして、そのままを撮る。|『ヴィタリナ』

みんなの映画 by Takashi Homma

No. 921(2020.08.03発行)
いい自転車。
『ヴィタリナ』監督:ペドロ・コスタ/出演:ヴィタリナ・ヴァレラ、ヴェントゥーラ、マヌエル・タヴァレス・アルメイダ、フランシスコ・ブリトほか/9月上旬、ユーロスペースで公開。
ホンマタカシ(以下H)
西アフリカ沖合いのカーボヴェルデという日本人には聞き慣れない国から飛行機に乗り、女はヨーロッパ西端の国ポルトガルのリスボンに訪れる。しかし、出稼ぎに来ていた夫は3日前にすでに死んでいた。夫の部屋は移民たちの住むスラム街、フォンタイーニャスにあった……と、珍しくあらすじからしゃべり始めたけど、もうこれだけなんだよね(苦笑)。だけどこれだからこそペドロ・コスタ(*1)の映画だよね。
BRUTUS(以下B)
一貫してますね。
ペドロ・コスタはしつこくそのスラム街でヴェントゥーラやヴァンダ・ドゥアルテを登場人物映画を撮り続け、今回は前作『ホース・マネー』(*2)にも出演したヴィタリナ・ヴァレラで撮った。フィクションかドキュメンタリーか? その問い自体が陳腐すぎてバカバカしくなるね。人気俳優に適当な役を当てはめて、彼らはその役作りをして、お芝居をして、派手な宣伝をして、お客が入ってよかったとか言っている映画作りじゃない。ヴェントゥーラやヴァンダ、今回のヴィタリナも役作りはしていない。自分の人生をそのまま演じているのだから。
そしてロカルノ映画祭の最高賞、金豹賞と主演女優賞を受賞しました。
今、日本映画を志す若い人たちには絶対観てほしい。マスト もう一度、映画作りというものを根本から考え直した方がいいと、思いました。
いつになく、力強いですね……。
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*1

1959年リスボン生まれ。89年に初の長編劇作品『血』を発表。以後、世界的な評価を得る。

*2

2014年公開。同年、ロカルノ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞するなど、各国の映画祭で絶賛された。

本記事は雑誌BRUTUS921号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は921号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.921
いい自転車。(2020.08.03発行)

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