「あの店で、朝食を。」イベントレポート

No. 920(2020.07.15発行)
最高の朝食を。

「特別な夏」といわれた2020年8月、お盆前の2日間。本誌8月1日号の特集「最高の朝食を。」にちなんだ朝食&ブランチイベントが開催された。あの人気店が朝食営業をやったら、いったいどんなメニューが出てくるのか。恵比寿〈創和堂〉、白金台〈LIKE〉の2軒が応え、オリジナルのメニューを考案。誌面で紹介したのと同じ朝食を食べられるイベントを開いた。

初日は8月10日、恵比寿〈創和堂〉にて。渋谷の繁盛酒場〈酒井商会〉の新店として7月にオープンしたばかりの話題店とあって、8時の開店を前に、すでに30人を超える行列ができた。いよいよオープン。カウンターでは、オーナーの酒井英彰さんを筆頭に〈酒井商会〉〈創和堂〉のスタッフ総出でゲストを出迎える。だしの香りが店内を満たし、ずらりと並ぶ土鍋が、ふつふつと湯気を立てる。奥の火鉢では、鮎がバチバチと焼かれる。炭が爆ぜる音が、朝の澄んだ空気に響き渡る。渋谷川に面した窓から射す木漏れ日が眩しい。
「この朝が気持ちいい場所に店を作ることができたから、ぜひとも朝食会をやりたいと思ったんです」と、酒井さんは話した。

お店の中央に位置するカウンターで黙々と。

カウンターには一人客も多く、皆黙々と、しかし嬉しそうに特別な朝食を味わう。名物のいわしのぬかみそ炊きに、ハムエッグかつ、酒粕西京焼きと、「飲めるおかず」ばかり。厨房の真ん中に立つ酒井さんが「ごはんいくらでもお代わりして下さいね」「ワインもいっちゃって下さい」と、カウンターの一人ひとりに元気よく声をかける。ビールやワイン、日本酒をお代わりする人も。

基本の朝食セット。手前右から時計回りに香の物、自家製味噌の味噌汁、土鍋炊きごはん、明太出汁巻き、名物イワシのぬかみそ炊き、呉豆腐と旬菜のお浸し、自家製納豆、中央は追加した半熟卵の朴葉味噌漬け。

一番乗りで7時から開店を待っていた男性一人客は、〈酒井商会〉の常連客。「ずっとぬかみそ炊きを、白いごはんで食べてみたいと思っていて。おいしくて、5杯もお代わりしてしまった」と、笑いながら腹をさすっていた。女性の二人連れは、一人が8月生まれで「今年のお祝いはこれしかない」と、バースデーディナーならぬ“バースデーモーニング”をプレゼントしたのだとか。開店してからも、数人の行列は絶えなかったが、結局用意していた約100食がほぼ時間ぴったりに完売する形で幕を閉じた。

渋谷川に向いたテーブル席には日が注ぐのが朝食の醍醐味。鮎の原始焼きが運ばれたところ。

翌11日の会場は、白金台〈LIKE〉。前日の〈創和堂〉と同じく、普段は静かな朝のプラチナ通りに、開店前から列が出来た。こちらは「ブランチ会」と銘打って開店は10時。少し日が高くなるだけで、暑さがぐっと堪える季節だ。

開放的な空間でブランチを。

会場ではオーナーシェフの原太一さんと〈PATH〉を共同経営し、幡ヶ谷でパティスリー〈Equal〉を経営する後藤裕一さんが、準備に勤しむ。原さんは台湾式朝食を、後藤さんも、パイナップルチーズケーキや中華デザートを用意した。アパレルショップの3階にあるカフェは、全方位的に陽当たり抜群。スタッフは〈LIKE〉〈PATH〉〈Equal〉の合同チーム。メニューは「好きなものを、好きなように召し上がって頂きたい」と、アラカルトに。ほとんどのゲストが葱饅頭や焼豚バオなどの点心、混ぜ麺やお粥のメイン、そして愛玉子“後藤スペシャル”などのデザートまで、好みで組み立てた“セルフ・フルコース”を、カクテルやワインとゆっくり楽しんだ。

手前から、焼豚パオ、混ぜ麺、シュウマイ、ネギ饅頭。ドリンクにはカクテルを。

小さな子供を連れた家族も数組。「どこにも行けない今年の夏休み、お楽しみはこれでしょって思って」と、話してくれた。年配の夫婦は「朝の外食といえば、ホテルのブッフェくらいしか利用したことがなく、本当に楽しい雰囲気でおいしかった。2人で全メニューを制覇しました」と、満足気だ。

デザートのピスタチオのヌガーグラッセ。右は愛玉子(オーギョーチー)。

いい一日は、いい朝食から。不自由も多い日々の中でも、朝の一食を大事に、豊かな一日を。そんな思いで企画された朝食&ブランチ会。多くのファンを持つ〈創和堂〉と〈LIKE〉2軒の愛され力と、期待を超えるパフォーマンスに支えられ、多くの人の心にこの夏の朝の景色を刻む時間となった。

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text/Kei Sasaki, photo/ Natsumi Kakuto

本記事は雑誌BRUTUS920号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は920号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.920
最高の朝食を。(2020.07.15発行)

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