エンターテインメント

密室で作り上げた究極のソロです。『Funkvision』西寺郷太

西寺郷太のポップ警察〜名曲・珍曲・捜査録〜

No. 920(2020.07.15発行)
最高の朝食を。

極限の状態が生みだした“ベッドルームファンク”。

 7月22日。西寺郷太、6年ぶり2枚目のソロ・アルバム『Funkvision』をリリースします。タワーレコードとタッグを組んで〈デイドリーム・パーク〉という新レーベルを作ることになって。「コロナ禍」の春、多くの社会的な機能がストップする中、ある種の「快楽物質」が分泌される不思議なゾーンに没入しながら自宅スタジオ〈GOTOWN STUDIO〉にて「ステイ・ホーム」で完結させました。

 前回、ソロ作『Temple St.』を発表したのは2014年。その後バンドがデビュー20周年を期に古巣のワーナーに誘われ、メジャーに再復帰してみたり充実していたんですが。契約満了もあって、再びソロ制作に本腰を入れ始めたのが3月上旬。まだ数週間我慢すればコロナの波は去るなんて、呑気な部分もあった頃です。

 困ったのは作業が進展するごとに「緊急事態宣言」真っただ中に突入していったこと、思ったようにゲストミュージシャンも呼べなくなって。ボーカルとドラムはすべて僕自身。エンジニア兼重哲哉君に機材を運び込んでもらい、ピアノも自宅のアップライトを共同プロデューサーの宮川弾さん、SWING−Oさんに弾いてもらい結局すべての音を「家」の中で録音することに。普通はドラムやピアノ、管弦楽器のために外のスタジオを借りるんですが。外スタジオも自粛で閉まっていたんですよね。

 ただ、そのゲストが少ない「密室感」をニュースサイト「ナタリー」創業者で長い友人の大山卓也君は「ベッドルームファンク」と呼んで絶賛してくれて。まさに純度の高い「2020年」を象徴している音になったな、と。

 アルバムの楽曲を最終的に並べ、音質のトリートメントをする作業である「マスタリング」は、スターリング・サウンドのジョー・ラポルタに依頼しました。フランク・オーシャン、ザ・ウィークエンド、ドレイク、ヴァンパイア・ウィークエンドも手がけ、デヴィッド・ボウイの遺作『★』でグラミー賞も獲得した世界最高峰のマスタリング・エンジニア。ニュージャージーから音源が届き、ヘッドフォンで聴いた瞬間の衝撃と喜びは忘れられません。「俺が長い間求めてたのは、この感覚だ」と……。Spotifyなどでもぜひ!

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にしでら・ごうた

音楽家。自伝的小説『'90sナインティーズ』を文藝春秋digitalで連載中。Spotify公式で「GOTOWN Podcast」配信中!

文・題字/
西寺郷太
編集/
辛島いづみ

本記事は雑誌BRUTUS920号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は920号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.920
最高の朝食を。(2020.07.15発行)

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