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コパカバーナでは、シナトラが歌ってたんですよ。|デヴィ・スカルノ(第三回/全五回)

TOKYO 80s

No. 920(2020.07.15発行)
最高の朝食を。
デヴィ・スカルノ

 東芸プロに入るとお金もかかるし、母と弟の心配もしなきゃならない。教養を身に付けるために、お花は草月流、日舞は花柳流。すごくお金がかかるんです。国際人クラブで歌手をしていたチキータと知り合って、その紹介でアメリカ人のお友達ができて。ある日、赤坂のコパカバーナに行くんです。そこのマダムはチェリーママというすごく有名な方。フランク・シナトラとも友達だった。国際的で並外れた人でしたね。数回訪れるうちに「うちを手伝ってくれない?」と言われたんです。収入はいいし、英語のプラクティスにもなる。そこは97%が外国人でしたからね。再現ドラマでは銀座のバーみたいに再現されるけど、全然違うの。世界の社交場でした。ニューヨーク、パリ、ロンドンから東京へ来た人たちは、みんなコパカバーナを目がけて行ってたの。フランク・シナトラが歌ってたんですよ。1晩3000万でね。それをマダムチェリーは払える人だった。1957年にオープンして、私がアルバイトしていたのは1958年。1階が大きなラウンジとバー、下がダンスホールで2階がフレンチレストラン。日本人のお客様は大映の永田社長や帝国ホテルのオーナーくらいで、ほかはみんな外国人でした。そこで働く女性は『VOGUE』から抜け出したように綺麗で、英語ができて、車で通っている人もいました。毛皮のショールを着けてね。女性はレディとして扱われていて、女性がたばこを手にすると男性が火をつける。女性が立つ時は男性が椅子を引いてくれる。「踊ってくださいませんか?」と言われて、ダンスホールで一緒に踊る。だから銀座のクラブとは違うんですよ。今の外国人はみんなスニーカーを履いて、飛行機に乗るにもラフな格好でしょ。あの頃はみんなネクタイをしてレストランでは男性がオーダーする。女性は「~が欲しいわ」と男性に言ってね。一回70年代に自分で作ったことあるんです、そういう店をね。でもやっぱり日本では社交界は無理。日本のバーやクラブでは女性がサービスする風習がありますでしょ。あれが滅びない限りダメですね。外国では奥さんと一緒に遊びに行くじゃないですか。日本の男性は結婚したら奥様を家に置いて出かけていく。今は2人で出かける若いご夫婦も増えましたけど、やっぱり男性同士で出かける風習ですから。それがある限り、日本での社交界はダメだと思いますね。

(続く)

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デヴィ・スカルノ

スカルノ元大統領夫人。著書に『選ばれる女におなりなさい』などがある。

PHOTO/SHINGO WAKAGI TEXT/KUNICHI NOMURA HAIR&MAKE/MAKIKO GOTO EDIT/HITOSHI MATSUO

本記事は雑誌BRUTUS920号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は920号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.920
最高の朝食を。(2020.07.15発行)

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