アート

長谷川踏太が、アートとのユニークな接点を作る理由。|『盗めるアート展』

BRUTUSCOPE

No. 920(2020.07.15発行)
最高の朝食を。
今年3月に開催されたsame galleryのオープニングイベント『bring your own art party』の様子。飾る場所がない、人に見せる機会がないなど、日本人があまりアートを買わない理由を考え、「アートを持ち込んで壁に飾れるイベントをやって、機会を増やせばいい」と、来場者が持ち寄った作品を飾った。
今年3月に開催されたsame galleryのオープニングイベント『bring your own art party』の様子。飾る場所がない、人に見せる機会がないなど、日本人があまりアートを買わない理由を考え、「アートを持ち込んで壁に飾れるイベントをやって、機会を増やせばいい」と、来場者が持ち寄った作品を飾った。

盗んだからって、通報されません!

 モノを盗んでいい。しかも、普段は触れることもままならない、守られる存在である美術作品を。そんなある種の“異常状態”に身を投じられる『盗めるアート展 − Stealable Art Exhibition』が品川のsame galleryで行われている。

 その名の通り、展示作品を盗み、持ち帰ることができる本展。「アートと観客の関係をいつもと違った形で結んでみる実験ができないか」  そう考えていたギャラリー責任者の長谷川踏太は、「このギャラリーの物件を見つけた時に、野菜の無人販売のように営業できるね、とメンバーと話していて、それならいっそ“盗める”方が、観客もアーティストも体験として面白いのではと思いました」と、本展の発端を語る。

「西洋と比べると日本はアートと人の付き合い方の種類が少ないように感じます。作品と観客という関係性だけではない付き合い方が増えると、アート業界・アートマニアと一般の人の間のグラデーションをなめらかにできるんじゃないかと思います」

 参加アーティストは、五味彬、エキソニモ、伊藤ガビン、中村譲二、Naoki “SAND” Yamamoto、村田実莉(skydiving magazine)、平野正子(skydiving magazine)、Merge Majurdan、ヌケメ、やんツー、加賀美財団コレクション。長谷川が「作品を盗まれても喜びそうな人」に声をかけた。自身もアーティストとして活動する長谷川は、「レンブラントやフェルメールのようなレジェンドクラスの作家でないと、作品が盗まれる経験はなかなかできないので、曲がりなりにも“作品盗まれたんだよねー”と言えるのは、ちょっといいですよね」と作者視点からの楽しみも話す。

 展覧会終了日前に全作品が盗まれた場合はその時点で閉展。盗まれることを前提に作られた作品とは? 「アート泥棒」という新たな自分の姿とは? これまでにない「盗む」という視点でアートに触れ、新たな関係を築いてみてはいかがだろう。

『盗めるアート展』

〜7月19日、same gallery(東京都品川区荏原4−6−7)で開催中。24時間オープン。全作品が盗まれ次第終了。入場無料。詳細は公式HPへ。https://samegallery.com/

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長谷川踏太/はせがわ・とうた』
1972年東京都生まれ。クリエイティブディレクター。ソニーCSLインタラクションラボなどで勤務、2000年よりロンドンを拠点としたクリエイティブ集団〈TOMATO〉に所属。

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Aiko Iijima

本記事は雑誌BRUTUS920号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は920号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.920
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