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【話題の漫画】横山裕一の新作が燃えている⁉ これは事件だ。|『燃える音』

BRUTUSCOPE

No. 919(2020.07.01発行)
東京の正解
『燃える音』表現の極北を目指すネオ漫画家による作品集。作者自装(帯は中松弘毅デザイン)で500冊が刷られた。発売元の888ブックスに加え、ナディッフアパート、ユトレヒト、タコシェ、ポポタム、代官山 蔦屋書店などで販売中。通販にも対応。3,000円。
『燃える音』表現の極北を目指すネオ漫画家による作品集。作者自装(帯は中松弘毅デザイン)で500冊が刷られた。発売元の888ブックスに加え、ナディッフアパート、ユトレヒト、タコシェ、ポポタム、代官山 蔦屋書店などで販売中。通販にも対応。3,000円。

奇才の詩的想像力が、ネオ漫画『燃える音』となって世界を照らす。

 本は壊れない。破れたり紙魚に食われたりすることはあっても、よっぽどの思いや思いのなさがないことには壊れない。しかし燃えるのだ。紙だから当たり前だと思われるかもしれないけれど、そうではなくて、文字が音になり音が燃えると本が燃える。何の話をしているかというと、横山裕一が放つ新作『燃える音』の話だ。

「出現」「30世紀」「燃える音」と題された3編が連なる『燃える音』は、作者初の自装、そして自費出版された作品集。絵本のような顔をした正方形のハードカバーを開くと、近年発表された『プラザ』『アイスランド』『ファッションと密室』(すべて888ブックス)と、広島で開催された『世界が妙だ! 立石大河亞+横山裕一の漫画と絵画』展のために描き下ろされた『ハンター』の、使われなかった原画のコラージュによって、顔が、コマが、短編が、作られている。なぜコラージュか? という疑問には「パーツを組み合わせていくと、自分が普通に描いたらこうはならないという絵が現れてくる。漫画を描くのとは違って、コラージュなら自分がお客さんになれる。こんな顔が出てきた、面白い、という絵画を描くのと同種の喜びがあるんです」という作者の言葉がヒントになりそうだ。「気持ち悪い」とも評される顔に、集団に、装置への、接写、接写、接写! これまでの作品で取り入れられていたロングショットや俯瞰する視点は遠く投げ捨てられて、オールウェイズクロースアップ! いつもながらの「速さ」に「重さ」も加わり、圧倒的に「熱い」。セリフはわずか。感情を移入したり共感したりするためのコマは一つもない。詩は「跳躍と切断」だと語った詩人の言葉を信じるなら、これは、絵本でなく、漫画であるよりもまず、一つの詩として生み出されたものなのだろう。紙の上で動かず、叫ばず、それでも燃え続ける文字が、世界は無害なパノラマなどではないということを伝えてくる。

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『横山裕一/よこやま・ゆういち』
1967年宮崎県生まれ。武蔵野美術大学卒業。2000年頃から漫画の制作を始め、国内ではこれまでに12点の漫画作品を発表。現在は万葉集を題材にした『ネオ万葉』を制作中。

photo (portrait)/Paul Barbera from Where They Create/Japan book edit&text/Hikari Torisawa

本記事は雑誌BRUTUS919号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は919号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.919
東京の正解(2020.07.01発行)

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