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【話題の映画】一度は折れた心を取り戻し、再起する過程を描いた新作映画が2作公開!

BRUTUSCOPE

No. 919(2020.07.01発行)
東京の正解

アーティストの行く末、山あり谷あり?

 かつて一世を風靡したものの、ある時忽然と世の中から姿を消し、「伝説の〜」と言えば聞こえは良いが、ある意味不名誉な枕詞をつけて後に語られるようになるアーティストは少なくない。中には完全にその道から足を洗う者もいれば、次なる一手を講じることができず、時間ばかりが無為に過ぎていく者もいる。

『15年後のラブソング』のイーサン・ホーク演じるアメリカの伝説のロッカー、タッカー・クロウはさしずめ前者だ。一方、イギリスの片田舎の町には、そのクロウのファンサイトを立ち上げ、日夜クロウの研究に勤しむ男ダンカンとその恋人のアニーがいる。アニーはそんな彼にほとほと愛想が尽きているのに、15年にもわたるグダグタとした関係に決着をつけることもできない。ところが、そんな彼らに転機が訪れる。ふとしたきっかけで、アニーはクロウとメールを交わすようになり、お互いの今のダメな自分の姿をさらけ出すうちに惹かれ合っていくのだ。そしてクロウは、これまであえて見ようとしなかった、自分の辿ってきた人生に真剣に向き合いながら再起への道を歩み始める。

 ペドロ・アルモドバルの新作『ペイン・アンド・グローリー』のアントニオ・バンデラス演じるスペインの映画監督サルバドールは後者だろう。母の死や体の痛みに耐えきれず、長く映画界から離れ、隠者のように暮らしていた彼のもとに、32年前に監督した作品がシネマテークで再上映される際に登壇してほしい旨の依頼が届く。そこから彼は、自ら封印していた人生におけるパンドラの箱を次から次へと開けていくことを迫られるのだが、むしろそのことで、サルバドールは生きる気力を取り戻すきっかけをつかむのだ。

 前者の監督ジェシー・ペレッツはレモンヘッズの元メンバーで、後に映画監督に転身していること。一方後者は、これまで旺盛な活動意欲を失うことなく走り続けてきたかに見えたアルモドバルの半自伝的作品であることを知って観ると、ますます興味深く思えてくるはずだ。

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『15年後のラブソング』

ある伝説のロックミュージシャンをめぐる三角関係を描いたロマンティックコメディ。伝説のロッカーを演じるのは、落ちぶれたアーティストをやらせると右に出る者はいないイーサン・ホーク。ローズ・バーン共演。原作はニック・ホーンビィ。全国公開中。

©El Deseo.

『ペイン・アンド・グローリー』

ペドロ・アルモドバル新作にして、『欲望の法則』『バッド・エデュケーション』に続く三部作の完結編。アントニオ・バンデラスが引退同然の身から再起をはかる映画監督を演じ、カンヌ映画祭主演男優賞を受賞。ペネロペ・クルス共演。全国公開中。

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text/Mikado Koyanagi

本記事は雑誌BRUTUS919号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は919号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.919
東京の正解(2020.07.01発行)

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