アート

【〜7月11日まで開催中】南米の若者が、ゲリラ戦術を駆使してまで表現したいこととは。

BRUTUSCOPE

No. 919(2020.07.01発行)
東京の正解
パブロ・センデハス(左) ヴィンセント・ライタス(右)

美しいアートの裏にある、残酷な今。

 地球の反対側にある南米。一見遠い国のようだが、アートを通して現地の今を見れば、そこが私たちの生活と地続きである事実を否応なしに突きつけられるはずだ。

 南米を拠点に活動する気鋭アーティストたちの作品を集めた『ハイリスク / ノーリターンズ』展が現在目黒で開催中。キュレーションは、アーティストとしても活躍するオランダ出身のヴィンセント・ライタスとメキシコ出身のパブロ・センデハスが担当した。そもそも今南米のアートシーンでは何が起こっているのだろうか。

「貧富の差が激しく、貧しい若者たちが創造的になれない現状があります。それがここ数年、ゲリラ的に表現活動を始める若者が増えているんです」(ヴィンセント)。「ゲリラ的」とは、発表の場も、描く素材もすべてDIYするということ。誰かの自宅をギャラリーにしたり、廃材を額縁にしたり、限られた状況で表現を謳歌している。

 そして彼らが作品に込めるのは社会への風刺。象徴的なのが、メキシコのマリオ・ペーニャ・グエメズの作品「現地調査」。

「2014年、汚職政治の糾弾運動をしていた43人の学生が、作為的に麻薬カルテルに襲われ失踪するという事件が起こりました。彼らを探す活動に参加していたマリオが、とある集団墓地に無残に弔われた学生の遺体を見つけ、その場の土と灰を使って描いたのがこの作品。汚職政治への痛烈な批判が込められているんです」(パブロ)

 一見美しいいずれの作品の裏側にも、驚愕のストーリーが潜んでいる。ぜひ自分の目で確かめて、切実さを感じ取ってほしい。

マリオ・ペーニャ・グエメズ「現地調査」2015年、キャンバスに土と灰。

2点。マクシミリアン・レオン「Ma yan Mozart1、2」2017年、油彩。

カルロス・マルティネス「Bricks」2019年、加熱加工レンガ。4点。

『ハイリスク/ノーリターンズ ─ 南米現代美術のゲリラ戦術』

23人のアーティストが参加。〜7月11日、青山目黒(東京都目黒区上目黒2−30−6 保井ビル1F)で開催中。木・金は12時〜19時、土・日は12時〜18時。それ以外の日は要予約。入場無料。

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photo/Hiromi Kurokawa text/Emi Fukushima

本記事は雑誌BRUTUS919号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は919号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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東京の正解(2020.07.01発行)

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