佐久間です。今回のお相手はロックユニット・GLIM SPANKYの松尾レミさん。「褒めろよ」と「愚か者たち」の2曲が特に好きで、よく聴いています。その音楽性にはアメリカのルーツミュージックの影響も感じるので、松尾さんには、今も色褪せないアメリカの古典SF小説、レイ・ブラッドベリの『火星年代記』を。地球を捨て火星に移住した人々の30年間ほどを描いているんですが、SFといっても決してワクワクさせるような冒険活劇ではないんです。一貫して流れるのは切なさ。詩的な静謐さの中に、各所に1950年代当時の社会への風刺がちりばめられているのは見事です。また、ディテールに凝った美しい文章で作り込まれた世界観は、各作品にしっかりストーリー性を持たせるGLIM SPANKYの音楽とも通じる気がしていて。稀有で最高なおとぎ話なので、きっと気に入ってもらえるんじゃないでしょうか。
『火星年代記』レイ・ブラッドベリ/著 小笠原豊樹、木島始/訳
「SFの詩人」と称されたブラッドベリによって1950年に発表された古典SFの代表作品。火星に移住してきた人間たちの出来事を描いた27の独立した短編を連ねた作品である。ハヤカワ文庫SF/940円。
- 編集・文/
- 福島絵美
本記事は雑誌BRUTUS919号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は919号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。