エンターテインメント

8時間の歴史の事実を、 いかに撮るか。いかに観るか。|『死霊魂』

みんなの映画 by Takashi Homma

No. 918(2020.06.15発行)
CURRY for Geeks 混ぜる、食べる、混ぜる
『死霊魂』監督・撮影:ワン・ビン/製作:セルジュ・ラルー、カミーユ・ラエムレ、ルイーズ・プリンス、ワン・ビンほか/8月1日、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。 ©LES FILMS D’ICI-CS PRODUCTIONS-ARTE FRANCE CINÉMA-ADOK FILMS-WANG BING 2018
ホンマタカシ(以下H)
ワン・ビン(*1)、またすごいのを作ったね。『鉄西区』『三姉妹』『収容病棟』と観てるけど、これはきてるね。8時間!
BRUTUS(以下B)
カンヌ公式作品史上、最長作品らしいです。
反右派闘争はワン・ビンの重要なテーマで、これまでも唯一のフィクション『無言歌』や、おばあちゃんに約3時間ほぼワンカットでインタビューしてる間に日が暮れて画面が暗くなって、「やられた」と思った作品もある。その頃から当時の生き残りを取材していて、それが120の証言、約600時間のラッシュ映像としてある。それを8時間にまとめたのがこの作品。でも取材をするだけなら、普通のジャーナリストでもできる。それを垂れ流すだけなら映画にならない。「一つの証言をほかの証言よりも目立たせることはしない」「証言を織り上げたり、差し込んだりすることはしない」とワン・ビンは言うけど、それだけでもこの作品は成り立たないと思う。やっぱり、ワン・ビンならではの編集点やリズムがあるんだよね。じゃないと、映画として8時間もたせられないと思うよ。
8時間⁉ と思いましたが、結果、最後まで観られてしまいました。
「反右派闘争」というテーマはあるけど、その力や知恵がワン・ビンを映画監督としている。今、フレデリック・ワイズマン(*2)を抜いて、世界一のドキュメンタリー映画監督だと思うよ。
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*1

数々の国際賞受賞。またドクメンタ14で回顧上映が行われるなど国際的に評価される。

*2

社会、組織構造を捉え続ける実録映画界の巨匠。ヴェネチア国際映画祭栄誉金獅子賞ほか受賞多数。

本記事は雑誌BRUTUS918号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は918号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

No.918
CURRY for Geeks 混ぜる、食べる、混ぜる(2020.06.15発行)

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