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【今夏公開】グラフィックデザイナー大島依提亜さんと語り合うウディ・アレン映画の魅力。

BRUTUSCOPE

No. 918(2020.06.15発行)
CURRY for Geeks 混ぜる、食べる、混ぜる
大島依提亜

それでも面白いから厄介なんですよ、ウディ・アレンは。

ウディ・アレンの映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』が今夏日本で公開される。ティモシー・シャラメやエル・ファニング、セレーナ・ゴメスら若手がこぞって出演するも、#MeToo運動の高まりとともにアレンの過去の疑惑が再燃、アメリカでは公開中止となってしまった“話題作”。なんだかめんどうな映画だなと思うかもしれないが、本作はニューヨークを舞台としたラブコメディ。ウディ節全開の楽しい作品なのだ。ということで、ウディ・アレン映画のポスターやパンフレットの数々をデザインしている大島依提亜さんに、本作とアレン映画の面白さのツボを聞いた。

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』御年84歳のウディ・アレンの最新作は、運命のいたずらに翻弄される、甘くて苦いラブストーリー。主演はティモシー・シャラメ。今夏、全国公開。右上の2種類のポスターは大島さんがデザインした日本のみで展開されるコラボポスター。イラストは木内達朗氏が担当。ウディ・アレンが大変気に入り、メインポスターにしたい! と言っているそう。
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』御年84歳のウディ・アレンの最新作は、運命のいたずらに翻弄される、甘くて苦いラブストーリー。主演はティモシー・シャラメ。今夏、全国公開。右上の2種類のポスターは大島さんがデザインした日本のみで展開されるコラボポスター。イラストは木内達朗氏が担当。ウディ・アレンが大変気に入り、メインポスターにしたい! と言っているそう。
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』御年84歳のウディ・アレンの最新作は、運命のいたずらに翻弄される、甘くて苦いラブストーリー。主演はティモシー・シャラメ。今夏、全国公開。右上の2種類のポスターは大島さんがデザインした日本のみで展開されるコラボポスター。イラストは木内達朗氏が担当。ウディ・アレンが大変気に入り、メインポスターにしたい! と言っているそう。

 ウディ・アレンについて語るのは、なかなか難しい状況ですが、騒動以前に撮った今回の作品は、個人的には、アレン流の『ライ麦畑でつかまえて』だなと感じてとっても面白かったんです。
大島依提亜
僕もめちゃめちゃ面白かった。ただ、「作品に罪はない」とよく言うけれど、そんなことはないと僕は思っていて。そういった負の要素も創作の根源となり作品に昇華されるのかもしれないけれど、作品を観賞するうえで弊害となってしまっては元も子もないんです。以前なら笑えたシーンが笑えなくなっていますからね。
しかもアレン映画は「自分色」が強い。
大島
彼の映画に出てくる男性キャラクターたちは自分自身の投影であり分身。昔はそれを自分が演じていたけれど、2000年代以降は、ほかの俳優に演じさせていますよね。最近だと『ミッドナイト・イン・パリ』のオーウェン・ウィルソン、『ローマでアモーレ』や『カフェ・ソサエティ』のジェシー・アイゼンバーグ、『恋のロンドン狂騒曲』のアンソニー・ホプキンスもそうでした。
しかもみんなアレンのものまね合戦になりますよね。早口でめんどくさい男っていう(笑)。
大島
手練れの俳優ばかり使うからうまいんです。しかもキャスティングがめちゃくちゃミーハーじゃないですか。必ず旬の俳優に自分をやらせる。
イケてる人にイケてない自分を投影(笑)。
大島
それが今回はティモシー・シャラメ。アレンのナルシシズムを満足させる究極形態(笑)。なんでシャラメ? と思ったけれど、あのイケメン顔に収納されている“ヘの字まゆげ”を前面に出し、天性の困り顔が完璧に機能している。かなりの精度で演じ切ってます。今回のことでシャラメのキャリアから抹消されてしまうのは本当に残念。ファン垂涎のキュートさなのになあ(笑)。
記憶されるべき名演ですよね。
大島
あと、女性たちに目を向けると、アレンの映画には繰り返し登場する女性キャラクターが存在していて。これも俯瞰すると、やはりアレン自身をアニマ的に自己投影したキャラクターなんです。近年だと『人生万歳!』のエヴァン・レイチェル・ウッドがそうだったけど、今回はエル・ファニングがその役割を担っているんですよね。
映画マニアの不思議ちゃんで、まんまアレンの女性版。『ブルージャスミン』でケイト・ブランシェットが演じた女もある意味そうでした。
大島
精神を病んで妄想を加速させる女なんだけど、ブランシェットの場合、それがアレン的なものへのアンチテーゼにも見えるんです。『マッチポイント』のスカーレット・ヨハンソンもそう。面白いですよね。忠実に再現する俳優たちがいる一方、それを超えていく女優たちがいるという。
アンチといえば、今回のセレーナ・ゴメスも。エルとは好対照のツッコミ役で、アレン的なものを真っ向から否定する立場。でも、シャラメがセレーナのためにシナトラの歌を弾き語りするシーンは非常にアレン的でロマンティック。ただ、今回の騒動やいろんなゴシップを含め、つい勘ぐりたくなっちゃう。なんでシナトラ? って(笑)。
大島
意味深ですよね。なんだかんだいって面白いから厄介なんですよ、ウディ・アレンは(笑)。

大島さんがデザインしてきた映画のポスターやパンフレットは100作以上に上る。ウディ・アレン映画は、『さよなら、さよならハリウッド』①、『僕のニューヨークライフ』②、『メリンダとメリンダ』③、『ウディ・アレンの夢と犯罪』④、『人生万歳!』⑤の5作品を手がけている。映画世界観をそのままA5サイズに落とし込み、ガジェット的に楽しめるパンフを作るのが大島流だ。最近は『ミッドサマー』のパンフが話題に。

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おおしま・いであ

栃木県生まれ。グラフィックデザイナー。映画を中心に、展覧会のビジュアルや図録、ブックデザインも手がける。『万引き家族』や『谷川俊太郎展』も担当した。

photo/
Natsumi Kakuto
text/
Izumi Karashima

本記事は雑誌BRUTUS918号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は918号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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