アート

【話題の写真】新垣欣悟が写す、沖縄の若者たちと“今”。

BRUTUSCOPE

No. 918(2020.06.15発行)
CURRY for Geeks 混ぜる、食べる、混ぜる
当時高校生だった少女。名護市辺野古で撮影。

赤く灯る建物を背にした青年。那覇市で。

未来を感じさせる若者と、過ぎた時を感じさせる沖縄の景色について。

 若者のポートレートが並ぶ、新垣欣悟さんの写真をSNSで見かけた。被写体の独特な顔立ちに、背景の建物や植物がヒントになって、沖縄で撮られていることがわかる。“地元”の匂いがいい感じに漂ってきて、惹き込まれてしまった。きっと、その空気に溶け込んだフォトグラファーに違いない。そんな印象を抱きつつ、連絡を取った。

「高校生の時にヒップホップに興味を持ったんです。アングラなカルチャーってなんてカッコいいんだ って(笑)。もともと一人であてもなく散歩をするのが好きなんですが、いつも細い路地へと誘われてしまうのは、打ち捨てられた建物の壁にグラフィティを見つけたりする面白さがあるからかもしれない。そういう“あからさまじゃないところ”に惹かれるんです」

 最初は遊び半分、インスタントカメラで撮っていたが、本格的に写真を始めたのは4年ほど前のことだという。知り合いからたまたま譲り受けた一眼レフのフィルムカメラを片手に、仕事終わりの午後8時頃から夜な夜な街を歩く。

「初めは、ISOがなんなのかさえわかってなかったんです。シャッターを切れば写るでしょ、と思ってたから(笑)。現像してみたらとても人に見せるようなものが写っていなくて、“あ、これは簡単じゃないぞ”と、自分なりに本やネットでカメラの構造について勉強しました」

 友人や気になる場所を撮影しているうちに、16歳から20代前半の若者をモデルにした「YOUTH」シリーズが生まれた。時代を感じさせる朽ちかけたビル、雑貨店、広場……。その中で、ちょっと危うげな雰囲気の若者たちの“今”が映し出され、不思議な違和感を煽る。

「そのコントラストがいいな、と。未来を感じさせる若者と、過去を感じさせる風景。どちらもリアルなんですよね」

 目標は、今年の年末までに300人を撮影することだ。

「写真集が作れたら、と思っているんです」と話す彼だが、一方で「決して写真家を目指しているとは言えない」という。新垣さん自身のスタンスを含めて、若者の、そして沖縄の“今”が少し見えたような気がした。

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『新垣欣悟/あらかき・きんご』
1991年沖縄県生まれ。大学卒業後、アパレルショップに勤務しながら写真を撮り始める。那覇市在住。Instagram:@__arigato

photo/
Kingo Arakaki, Chloe Jafe (portrait of Kingo Arakaki)
text/
Shiho Nakamura

本記事は雑誌BRUTUS918号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は918号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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