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新しいホームドラマは、こうして生まれた。|『俺の話は長い』

BRUTUSCOPE

No. 918(2020.06.15発行)
CURRY for Geeks 混ぜる、食べる、混ぜる
金子茂樹

 昨年の秋クール、ドラマ好きの間で話題になった連ドラがあった。『俺の話は長い』。脚本は金子茂樹。生田斗真演じるニートの31歳男性の満が、屁理屈をこねながら母親の住む実家に居座り続けるも、姉家族との触れ合い、というか、バトル(口論)を通して、自立するきっかけを見出そうとするホームドラマである。これが見事昨年の向田邦子賞に輝いたのだ。

「受賞の連絡をもらった日が、ちょうど緊急事態宣言が出た日だったので、ヤッターと言う雰囲気でもなく。もちろん、もらったことはすごく嬉しかったですけど」

 ホームドラマは流行らないといわれてきた昨今、そこをあえてホームドラマにこだわり、それも1回で2話ずつという『サザエさん』のようなオムニバス形式をとったことが新鮮でもあった。

「もともとホームドラマがやりたかったんですよ。そこで、今回の雛形みたいなプロットが決まって、それが1話冒頭のすき焼きのシーンだったんですけど、そこの台詞がバーッと30分くらいあったんですね。すると、プロデューサー(櫨山裕子)がこれを1時間にするとちょっと持たないから、30分で切っちゃったらいいんじゃないって。そこからすぐ30分2本で行こうという形が決まったんです」

 とにかく、そこでの生田斗真の屁理屈をこねくり回した長台詞が超絶に面白いのだ。

「実は、自分も20代にニートしていたことがあって、本当に屁理屈だけで食っていけないかと真剣に考えていたことがあったんです(笑)。そんな青春をこじらせたような台詞を、いろんな経験を積んできた今の斗真くんになら任せられると思って」

 そして、そんな弟の屁理屈をぶった斬る姉役の小池栄子の素晴らしさ。

「僕はもともと強い女性に叱られるのが好きなんですよ(笑)」

 話を聞くにつけ、ますます金子本人の自伝的な作品にも見えてくるこのドラマ。

「これまで自分がやってきたドラマって最終回をずっと決めずに書いてきたんですよ。それが、連ドラを書くのは体力勝負なので、その前に半年トレーニングして、フルマラソンに出たんですが、コースの途中で『ロッキーのテーマ』を演奏している人たちがいて。その時、満がこっち側を走っている姿が見えたような気がしたんですよ。それで、今回はこのゴールを目指して書けばいいんだと、初めてそう思いました」

『俺の話は長い』

生田斗真主演の、31歳屁理屈ニートのマシンガンのような長台詞が毎回炸裂する、これぞ令和のホームドラマともいうべき傑作。共演に小池栄子、安田顕など。Blu−ray BOX(24,000円)、DVD BOX(19,000円)がバップから発売中。

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金子茂樹

かねこ・しげき/1975年千葉県生まれ。脚本家。主な作品に『プロポーズ大作戦』『ボク、運命の人です。』など。『俺の話は長い』で第38回向田邦子賞を受賞。次は『ふぞろいの林檎たち』のような青春群像劇を書いてみたいとのこと。

photo/
Wakana Baba
text/
Mikado Koyanagi

本記事は雑誌BRUTUS918号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は918号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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