【力が湧く炭火焼き】いろ鳥 / 炭火屋 るぷりん

グルマン温故知新

No. 917(2020.06.01発行)
マンガが好きで好きで好きでたまらない

元気な肉を、炭火で焼いて。

気をもむ情勢が続いている中でも奮起してオープンした2軒。その共通点は「炭火で焼いた肉が旨い」こと。最も原始的であると同時に、良い素材の持ち味をぎゅっと閉じ込められる調理法「焼く」を味わって、心身のエネルギーを補給したい。

【いろ鳥 ●外苑前】銘柄鶏×2つの熱源で編み出す焼き鳥の注目店。

 店主の張ヶ谷栄司さんは、腕利きの焼き鳥職人を多数輩出する西麻布〈鳥よし〉で6年間修業した。その後地元である埼玉・大宮で〈焼鳥 鳥せい〉をオープン。名店仕込みの腕前で、たちまち人気店へと上り詰めた。程なくもう一軒を出店し、調子は上々。が、「やっぱり焼き鳥店が多数ひしめく都内で勝負したい!」という思いが募り、この春、南青山に店を構えた。

焼き台を切り盛りする張ヶ谷さん。

 焼き方の基本は〈鳥よし〉譲りの「近火の強火」ながら、備長炭に加えて電気の焼き台も取り入れているのが張ヶ谷さん流。「1分間で600℃まで上がり熱量が安定しているので、部位の特性に合わせて活用しています」。例えば脂が滴る「かわ」は、炭火で焼くと温度が落ちるため前半は電気で。「レバー」はふっくら仕上がる炭のみで、といった具合だ。扱う鶏の銘柄も「甲州地どり」「伊達鶏」「ふもと赤鶏」など数種類に及ぶ。豊富な経験値でそれぞれの肉質を見極め、極上の一本を供する。

焼鳥

左から、鶏の内臓や鴨肉もブレンドして店で挽いた肉を使う「つくね」、皮目をぱりっと焼き上げ、塩のみで味つけした「手羽先」、丸鶏で仕入れてさばいている「甲州地どり」の雌鳥を使った、しっとりと軟らかい「かしわ」。いずれも、おまかせコース8,000円で登場する肉の焼き物の一例。

鶏もも肉のロースト 土佐酢がけ

鶏ももの一枚肉を香ばしく焼いてそぎ切りにしたものに、土佐酢と白髪ネギ、ユズを合わせて。土佐酢の酸味でさっぱりと食べられる。こちらも、おまかせコース8,000円で登場する前菜の一例。

塩そぼろ丼

コースには〆のご飯ものが含まれていないので、食べたい場合にはアラカルトで注文するスタイル。よくある甘辛味ではなく塩だれで仕上げたそぼろ丼は、薬味のユズの香りも相まってあっさりとした味わい。900円。

店内で目を引くカウンター後ろの壁面には、左官職人・久住有生さんの作品。

【炭火屋 るぷりん ●銀座】銀座のど真ん中で静かに意欲を燃やす酒場。

炭火を操る料理担当の海老沢淳一さん。

 国産クラフトビールと独創的なつまみ、天然氷を使ったかき氷で人気の〈麦酒屋 るぷりん〉に、弟分が誕生した。弟らしく、場所は同じビルの1フロア下。こちらは「炭火屋」と銘打ち、焼いた肉や野菜が主役だ。「日本で生まれた、小規模な生産者が手がけるお酒や食材の魅力を伝えたい」という店主・西塚晃久さんの思いは2012年に「麦酒屋」を開店したときから揺るぎない。だから、肉は北海道で駆除されたエゾジカやクマ、あるいは「湘南みやじ豚」「足利マール牛」など信頼関係を築いた生産者が育てたものを使う。健やかな素材だからシンプルに炭火で焼いて、添える調味料でアクセントを。酒も、ビールは伊豆「反射炉ビヤ」や鳥取「タルマーリー」などのマイクロブルワリーから。ワインやクラフトジンも、思い入れある造り手を粘り強く口説いた。

 さりげない雰囲気の品書きや店構えに、元気になれる酒場を営む、という信念が満ちる。

エゾ鹿ハツ

農作物を守るために駆除されたエゾシカを、猟師さんから直接仕入れている。「レストランでは肉の一部だけしか使われないため、うちはハツやレバーといったマイナーな部位を積極的に入れています」と西塚さん。弾力ある食感が楽しめる焼き加減に仕上げ、パセリバターとレモンを添えて。1,400円。

サンバファーム かぶ

千葉〈サンバファーム〉のカブは、皮付きで焼いて、仕上げに塩を振るのみ。水分が浮き出て断面に光るほど瑞々しい。ちなみに“サンバ”は音楽ではなく「産婆さんのように元気な野菜を送り出す」という思いからだそう。

麻婆豆腐丼

具材は合挽き肉とネギと豆腐、と極めてスタンダードながら、豆板醤発祥の地で作られる、深いコクのある「郫県豆板醤」を使うのが味の決め手。花椒もしっかり効いていて、心地よい痺れ感が。900円。

店内には、様々な形のアンティークの椅子が温かく、くつろげる雰囲気を醸し出す。

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いろ鳥

電話:03・6447・1027
営業時間:17時〜23時30分LO。
酒:ビール800円〜。ハイボール700円〜。ボトルワイン6,800円〜。
価格:おまかせコース8,000円。飯・麺900円〜。鶏の唐揚げ600円(2個)。
席数 :カウンター13席。

●東京都港区南青山3−2−6 セントラル第5青山 1F 1A。日曜・祝日休。交通:東京メトロ外苑前駅から徒歩4分。サービス料10%。要予約。2020年3月に開店。おまかせコースの内容は、前菜、肉の焼き物7種、野菜2種、フランス原産のうずら卵「エル・フランス」、チーズ焼き、箸休め、フォアグラ茶碗蒸し、鳥スープ、甘味。シャンパンや銘醸ワインのリストも充実している。

炭火屋 るぷりん

電話:03・3289・8010
営業時間:15時〜21時LO。
酒:ビール800円〜。日本酒700円〜、名物ドリンク1,100円。
価格:おつまみ700円〜。炭火焼き700円〜。ミニご飯600円〜。
席数 :カウンター5席。テーブル5卓14席。

東京都中央区銀座6−7−7 浦野ビル2F。月曜休、不定休。交通:東京メトロ銀座駅から徒歩3分。2020年4月にオープン。以前この場所にあった日本料理店〈馳走 啐啄〉は、西塚さんのお父さんのお店。そちらが西麻布に移転することになったのを機にここを譲り受け、食器も一部受け継いだ。自家製のかき氷シロップ、いちじくバターなど、オリジナル調味料の瓶詰も販売。

*営業形態、営業時間等は変更になることがあります。

photo/
Yoichiro Kikuchi
文/
小石原はるか

本記事は雑誌BRUTUS917号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は917号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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